[厨房の入口近くで立ち止まり、ヘルムートがブリジットに向かって、詰問めいた問いを投げるのを見る。
彼女が部屋から出なかったのは、自分に止められたからだと口にしたなら、否定するように首だけを振った。
その行動は、彼女に更なる不安と恐慌をもたらすものだったかもしれない]
ヴィアベルさん!
[パニックに陥ったらしいブリジットが投げつけたナイフがヘルムートの腕に朱を散らすと、案ずるように声をあげる。
否、真実少年は案じていた。
追いつめられた人間は、何をするか判らない、ヘルムートが万一返り討ちにでもあってしまったら、目的が果たされない]