―クレメンスの部屋―
ナータもまた、そういうことを言う。
[覚えていて欲しいと言われて救われる気分になって。
忘れてもいいと言われると、頬に伸びてきた手の上から恐る恐る自分の手を重ねて溜息を吐いた]
俺は、覚えていたいんだ。
ナータのことも。
何が、あっても。
[彼女の手で生を閉じられることを想像しながら呟く。
死ぬ気も殺される気もないけれど。それだけはきっと受け入れる。
それが出来る人であるかどうかはまた別として]
……うん。分かった。
後で入口に置いておく。
[沁み込んでしまっているのはクレムの血だから、自分で洗った方がいいんじゃないかと思ったけれど。
断れば寂しい顔をされそうな気もして、いつものように甘えておくことにした。部屋の扉に鍵は掛けないという宣言にもなったか]