[扉の影で僅かに揺れる髪。
ラッセルの呼びかけに応えるように緊張した面持ちで姿を現し、言葉を交わす少女とラッセルを交互に見遣る。
上流家庭の事はよく解らないから、余計な詮索は避けた。
やがて、少女の声がこちらに向けられるのに、もう一度立ち上がって]
初めまして、ヘンリエッタ様、でよろしいでしょうか?
私はユージーン・グレイナーと申します。
麓の村で、こちらのお屋敷の事を伺って……その、珍しい本があると聞いたものですから、書庫を拝見さていただければと訪問させていただきました。
短い滞在ですが、よろしくお願いします。
[緊張している少女を気遣うように、できるだけ柔らかく。言葉を選んで挨拶をする。
自分の外見…半分の面差しを隠した姿が、あまり快く思われないのは知っていたから]