[扉に鍵はかかっていたか、否か。
かかっていたならば、強行突破で派手な物音が響いたろうが。
ともあれ、扉開いて踏み込んだ先にあったのは──あかいいろの、広がり。
そして、心臓と内腑を失った女性の姿。
開け放たれた窓から吹き込む風がカーテンを揺らし、揺らめく影をその上に描き出していた]
……っ……まだ。終わらん、という事、か。
[最初に口をついたのは、そんな一言。
直後に、つきり、と。
どこかが痛むような心地がしたのは気のせいだったか、どうか。
確かめる術は持ち合わせていない。
ただ]
……苦しい思いをさせて。
すまなかった。
[厨房で、己が在り方を告げた時の様子を思いだし、小さく紡ぎ。
嘆息の後、深紫を伏した。**]