……これは。
単に、血を浴びたにしては……。
[左の爪を染めるあかは、他とは着き方が違うように見えた。
惨状のさいに散ったいろを浴びただけとは違うような。
何かに突き立て、掻き毟ったようにも見えるそれは、飛び散ったものを浴びた結果としては不自然に見えて]
抵抗の痕……とみえなくもないが。
[単純に考えるなら、襲撃者に抵抗した痕──とも見えるが]
本当に、そうだとしたら。
……女性というのは、やはり、強いな。
[場違い、とは思いながらもついこんな言葉が口をつく。
そうでもしないと、そろそろやり切れない──というのも、少なからずあるのだが]