ミッキー。こんな話を知っているかい。
むかしむかし、神様のお遣いが国中の勇者を集めて、一人を天の使者として召抱えると告げた。
われもわれもと、みなが声高く名乗りを上げたさ。
集められたのは世のため人のため、立派な行いをした人たちばかり。
雄雄しき戦士、高潔な騎士、心深き賢者……
けれど最後に選ばれたのは、誰より非力で臆病者の少年だった。
英雄たちを羨ましげに眺めるばかりの、小さな小さな少年が。
その子がその場に招かれたのは、ほんとにちっぽけな理由だったのに。
ただ一度、友だちの危機を見捨てられずに、自分が悪者になって小さな嘘をついた。それだけ。
でもね、所詮は神さまから見れば、一人ひとりの人間の強いの弱いのなんて、大した違いじゃなかった。
誰より非力で誰より弱虫だからこそ、小さな勇気を振り絞ることは難しい。
その大きさを、神さまのお遣いは評価したんだ。
……むかしむかしのお話さ。