─ →二階/客室 ─
[三階で起きた出来事は誰かから聞くことが出来ただろうか。
聞いたところで話をしたことが無い人物がころされたというだけだったため、そこまで大きな関心は示さず。
事を為したのがベルナルトだったと言う事実のみを認識することだろう]
…………………
[客室に戻ると僕は服を脱ぎ、左足の包帯も外して湯船にしっかり浸かることにする。
その途中で目に入る、洗面台の鏡。
前髪の下に左手を滑り込ませ、直接肌に触れた。
返る感覚はおおよそ肌とは言えぬもの。
左目があるはずの場所は窪み、それを覆い隠すかのように瞼や肌が捩れ、歪んでいた。
僕の命を奪いかけた、忌まわしい痕]
…こんなところで、死んでたまるか。
[ベルナルトにも言った言葉を、鏡の中の自分───左目周辺の傷跡に向けて宣する。
眉を寄せた状態でしばし見詰めた後、視線を外して湯船へと身体を浸けた]