─ リンゴの樹傍 ─[伸ばした手は熟しきっていないリンゴを突く。拾うことは無く、ただ暇を持て余すが如く。その頭上には落ちずに留まった実がいくつか成っていた。根元に転がるものとは違う、ほんのりと色付いた熟しかけの実]……折角、成ったのに。[あの嵐が無く、順調に熟せば絵にも描かれ、誰かの口に入ったであろうリンゴ。貰いに来た人は既に赤く染まり、魔法の担い手もまた赤く染まるのかもしれない]……好きで落ちたんじゃ、ないよね。[呟いて、土がこびり付いたリンゴを少しだけ撫でた]