[エーリッヒに続いて、目の前でユリアンが死んだのがノーラにも応えたのだろうと思う。ダーヴィッドがノーラを追ったのを見て、ライヒアルトとナターリエに身体を向けた。]
ああ、薬がまだだったな。
はやく取りに行くと良い。
[抱きかかえられ無防備に落ちた、ナターリエの右手の皮膚が変色しているのが見えたから、そう言った。薬箱から消毒用アルコールと包帯を少しだけ分けてもらう。]
ナターリエ。
否、何でも無い。
──自分の手当てをしてくれ。
[女性に掛ける言葉は思い浮かばず、結局はそれだけを口にする。ライヒアルトに礼を言いその場所を後にする事にした。
ユリアンの遺体に礼服の上着を掛けてから──遠ざかる。石化しない皮膚が冷えて硬化していく様子が胸に痛く。]