人狼物語 ─幻夢─

64 滄に揺らめく銀鏡


下男 アーベル

― 浴室 ―

ん、昔はネ。そう思ってた。
俺は人狼に会った事があるのサ。
綺麗な銀色した、狼二匹に。
そいつらは人を食った残骸だけ残して、森の中に消えていった。
…俺そん時、子供心にちょっと人生に絶望しててさ。
そんな中で、圧倒的っていうのかな…とにかく凄いモン見せられて、惹かれた。魂取られたんじゃないかってくらい、魅せられたネ。

[狼になりたかったかと問う、幼い瞳に返すのは語る事が無かった過去の一端。それは放浪する直前、転換期の訪れの事。
子供の頃の強い憧れ、なんてぬるい物ではない、強い執着だった。

今は狼に成りたいと思ってはいないけれど――なぜなら彼らとは違いすぎる自分を知ったから。

それでも執着はささやかなユメへと変わり、今も胸にある黒い小瓶にほの暗く収まっている。]

(87) 2011/01/15(Sat) 17:18:21

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