[沈黙するダーヴィッドを見詰めて続けるヘルムートも言いようの無い虚無感に襲われる。見開いたままのサファイアブルーの瞳が揺らいだ。半数は女性が乗るヘリに、8人中ピューリトゥーイ2体は乗せて行けない。そして、ダーヴィッドも、その事を理解している。まだ世界を知らない子どもの言葉は真っすぐで、大人には残酷だ、と思う。]
ベアトリーチェ。
彼は、異常な薬物を投与されている、んだよ。
[首を横に振って、深い息を吐こうとする。ダーヴィッドの額に浮かぶ汗を見ると、無意識に手がのびた。指先で拭う水滴は、自らと同じ人間の体液の匂い──。]
……ノーラ、ベアトリーチェ。
出来るなら、私を此処に置いて。
ゼルギウスファイルをPCから探してくれないか。
こうしてる間にも石化病は進行して行く。
もし、ヘリがすぐ動くようなら、先に乗ってくれて良い。
──そして、ダーヴィッド。
私はおまえと二人で話がしたい。