―― 回想 その時 ――
[見たくなんてなかった。
でも、見ないと。見て、覚悟を決めないといけなかった]
[薄暗い廊下。進むごとに強くなる血臭。
逃げたくて、逃げたくて、でも足を叱咤して。
あと少しで非常口が見える所。ごくりと唾を飲んだ]
[まだ、そこに死体があったらどうしよう。
まだ、生きていたらどうしよう。
"襲撃"した犯人が、そこにまだいたらどうしよう。
じりじりじりじり進んで、目に入ったのは一面の赤]
[しばらく呆然と立ち尽くした。
この血の持ち主は、とても生きているとは思えなかった]
…………っも、ヤ………
[悲鳴も出ない]