― 昨日・広間 ―
[ふと、傍らからエーリッヒの名を呼ぶ、ライヒアルトの声。
触れる事の叶った手は離せずに、彼の腕へ添え置いていた。その甲に掌が重なって>>31、目を見開く。]
ライさん、…
[繰り返される言葉は先と変わらなかった。
思わず、握り締めた指が彼の黒衣に皺を作ったかも知れない。]
…ライさんの、馬鹿。
[けれど、眼前で曝された友の決意が、彼を揺さぶったのだろうか。
それは途切れ途切れにも関わらず、何処か強い意志のようで。違和を纏いながらも、彼が彼で在るのを感じる言葉でもあったから。
眉を下げる。]
……私も、傷つけさせたくない、のに。
[返されたのは、苦笑に似た笑み>>67だったか。]