[身支度を整えてから、部屋の机に目を向ける。
手に取ったのは小さな鞄に入れていたあのナイフ。
少しの間見詰めてから、シーツの端を裂いたもので
刃の部分を覆い、腰のポケットにねじ込んだ。
それから目は、湖畔の絵を収めたスケッチブックへ。
思い出されたのはイヴァンに絵を見せる約束で――。
また暫く見詰めていたものの、今は携えないことにした。
こうして漸く廊下に出てみれば確かに、
生臭いものが鼻を突いて感じられた。
広間へと行こうとしていた脚は二階の階段傍で止まる。
くらりと立ち眩み、壁に身を寄りかからせていた。**]