うーん、むん・・・むー・・・
[小さな唸り声を漏らしつつ、その華奢な両の手で掴んでいるのはどうやらグリーンオニオンらしい。
ツンととがった緑の葉が吹き付ける海風にはためいて、まるで抜かれまいと必死に抵抗しているようだ。]
・・・よしっ
[根競べに負けた野菜が、ずぼりと土を引き摺ってその白い脚を見せた。
グリーンオニオンを抜くのにはコツがいる。
やたらに引っ張ると途中で切れてしまうのだ。
そんな時はなんだかアンラッキーな気がしてしまう。
きれいに抜けたことに満足そうな笑みをこぼし、...は曲げていた腰を伸ばした。]
良い天気だなぁ・・・島が近いや。
[凪いだ海の玄関口にぽつりと小さな島が鎮座している。
それは遠くから見る分には、丸くてかわいらしいものにも思えた。
だがそこに行ってみたいと思ったことはあまりない。
昔は陸続きだったという話も聞いたことがあるが、今は生きている人間は住んでいなかった。
その名前は嘆きの島。死人の住処だ。]