―― 村はずれ ⇒ ――
あ
ぁああ あぁああああっ
[唸るように叫んでぐっと鉈を握る。振りかぶる。材木置き場の壁に叩きつけた。友人の死をもたらした狼に対する怒りと、自己嫌悪と、都会で覚えてしまった破壊衝動と]
[ぐちゃぐちゃに渦巻く頭をクールダウンさせるために鉈を振るった。振るい続けた。友人の棺予備となりうる箱に傷をつけなかったのは、せめてもの理性か]
………………
[しばらくの後。たくさん暴れてさすがに落ち着いた。こわばった、けれど表面を取り繕った面持ちでリヤカーに大き目の木箱(薪炭材を詰めていたもの)を運び出す]
[後に残された材木置き場には、木っ端の数と酷い刃傷ばかりが一面に残されていた。鉈はそこにはもう置いてない]
[その傷は、詳しくないものが見れば見ようによっては狼の暴れまわった爪あとにどこか似ている]