[水遣いと別れた後、己が領域で独り思案を巡らせる]
やれ…ほんにあの子がそこまで人に踏み込むを許すとは。
……まこと、有り難き事よの。
[ほう、と息を吐いて、遠くを見るかのように過去を思う。
神魔の子が人を寄せぬに至る経緯は、世界の記憶である蝶もよく知ってはいた。
先の暴走は、図らずもその存在を世に知らしめるに至り
人々は、恐れ、時に崇め、求めた……神魔の「力」を。
そう、人々は「力」のみを求めたのだ]
あの頃……我は何もしてやれなんだ。
我が下手に宥めても、の……人が変わらねば何も変わらぬ。
[「力」のみを必要とされた神魔の子は、自らの存在理由を見失う
それは、人の世に落ちてきて、何も判らずにいたあの頃を思わせて
違ったのは、蝶の手さえ振り払ったと言うこと]