[問われた言葉。その言葉は、酷く誘惑的に思えた。
同時に、エーリッヒや、オトフリート、温かさをくれた人たちのそれぞれの手を思い出す。
逃げる、それは、その糸を断ち切るということ。
護るといった人を、護れなくなるということ。
護るには、自身が生きてなくてはならないから。
子どもだ、と思う。自分が生きてきた年月は、前にいるダーヴィッドの、三分の一ほどしかない。
だから、子どもでいいのに、と思う。
でも。
優しい人たちは、自分が生きることを願ってくれた。あの温かさは、確かにそこにあって、今も心の中に、ある]
……逃げない。
逃げたら、体も心も、石になってしまうから。