あれ。そういえば、ボクもう男装続ける意味ないんじゃない?
[いつものように、男物の仕立ての良い服に着替えようとした手を止めて、そんな事を呟いた。
彼女が男として育てられたのは、人狼騒動に巻き込まれないようにする為、蒼花を持っている事を隠す為だった。
けれど、実際にこうして騒動に巻き込まれてしまった事実は、モルゲンシュテルンという特殊な家柄から「花もしくは守り手の能力を持っているだろう」という憶測とともに、余所の貴族どもにも知れ渡るだろう。
今回の騒動で生き延びたところで、隙があればまた騒動に巻き込ませようとされるだろう事は、男だと偽ったままでも、女であることをバラしても一緒で]
もしかして、このドレスって、花の事をバラす為じゃなくて、女に戻らせるためだったのかな。
[そういえば、ドレスは肩の開いたもの(蒼花が見える位置まで露出するタイプ)と、首まで覆うタイプのものの2種類があった。
変な所まで気の回る執事のセバスチャン(実は烙印持ち)は、けれどその意図が微妙に掴みにくかった。
何故か父は、執事の意図がわかるのだが]
捻くれ者同士通じ合う、父上と一緒にしないで欲しいなぁ。