―宿屋―6年前…そうねぇ。もう働かない頭だけど、お名前にもお顔にも覚えがないから、初めましてね、きっと。そう、美術商…。[花茶を前に、幾分柔らかさを取り戻しながらノーラに話しかけて。買い付けにいらしたのかしらと、口を開きかけた頃に聞こえた夫の声に、尋ねる声は一度中断された。]