─ 宿→二階角部屋前 ─
[主人から借りた部屋をすぐには確認には行かず。
暫くは静かにそこに居て周囲を探っていた。
自衛団も来たが、話される言葉は予想そのままで表情変わらず。
唇が動けば、たとえ声がなくとも読む事はできる。
特技というよりは生きるための業を生かし、少女の小さな囁きや、ヘルムートの呟きも拾っていった。
もう得る物はないかと判断した頃、宿の二階へと上がる。
借りた部屋へは行かず、真っ直ぐ角部屋へと向かい、扉を叩いた。
返事があっても開ける事はしない。聞こえないからだ。
友人が開けるまで、扉の前で待っていた。]