─ 森 ─
[12年前の出来事。
抜け落ちた部分の記憶は、『両親は雪嵐の夜に外に出て事故に遭った』という言葉で埋められて。
実際には、その死は事故ではなく、酷く不自然な傷によってもたらされたもの。
獣のものと思しき爪と牙の痕が刻まれた亡骸を見た者は限られているだろうが、とにかく、人の手、或いは事故によって死んだとは言い難く。
しかし、何故にそうなったのかの理由がつけられない事と、恐らくは唯一の目撃者である自分の記憶が錯乱していた事。
その点から、表向きは事故としてほしい、と叔父が望んだとは知らないままでいた]
……似たような、は。
状況だけに、しといて欲しいんだが、な……。
[ぽつり、と。
零れ落ちるのは、低い呟き。
深い白を見つめる翠に宿るいろは、冥い]