そんなことは無いわよ。こんな世界じゃなかったら、こんなこと私にはできないわ。[逆さまの顔がにこりと笑んで。視線の先で風が冷気とぶつかり合い相殺される][奔る赤の光に風は巡り、少女の身体を逃れさせるけれど]…駄目よ、怒らないで。[少女の左脚を彩った緋色に、手の本が独り巡る。ばらばらと酷い音を立て続ける紙は幾枚かが表紙を離れて][扇状に展開した白紙の頁は五枚。その全てが黒衣を貫かんと真直ぐに下降した]