―広間―
[転寝といっても、寝入りは浅い。
人の近づく気配、そっとかけられた毛布。
ぼんやりと薄く目が開いて、そこにいたナターリエを見ると淡く笑みを浮かべた]
ありがとう。気を遣わせてごめん。
[声は先よりもずいぶんとゆっくり。
視線だけで彼女が離れてゆくのを見送ると、またそっと目を閉じた。
二階に戻って寝るのは、団長が話をするのならば無理であろう。
八年前はあの家で、一人で眠ることがうまく出来なかった。
葬儀の準備、家の整理、そういったものをやっていたし、多少顔色が悪くても両親の死、しかも不倫だどうのという理由から受けたショックとして誤魔化せていただろう。他者の手を拒んでいたのもあったし、医者や薬師の世話になるような事態は免れていた。
今は多少眠りが浅いだけでそれ以上に問題はない――と、思っていたが、それでも疲れはあるようだ。自分の状態をそう理解すれば、体を休めることにした**]