―元宿屋・二階・階段から二つ目の部屋―[着替えの鞄からは聖書を出しただけですぐに閉じて。墓地の雪払いと掃除をした後、準備してすぐにこの宿へと来たから。今日はまだ飴色の音を鳴らしていなかった]……安らぎのあらんことを。[亡くなった灯台守とは特に親しくしていたわけではない。けれど顔見知りが亡くなったのだから悼む想いが皆無でもなかった。飴色を構えると二三の音で弦の調子を整え、そっと弓を滑らせる]――去りにしひとをしのぶれば――[葬送曲は一節分だけ流れて。静かに*消えた*]