いいえ、苦労なんて何一つ。私が望んで旅をしてるんだもの。[軽口に返るは変わらぬ笑み。足から零れる緋色は靴色をも染め替えているのだろうけれど][氷の塊に打ち抜かれて炎の球の力は明らかに激減した。黒衣を焼く力が殆ど残されなかった程度には]…やだ、この子を失ったら私は何処へもいけなくなるわ。[開いたままの本を両腕に抱え込み、薄れた笑み]――シェイド。[『呼ぶ』は闇。溢れ出した漆黒は本と主たる少女を覆い隠そうとその裾を広げて]