ふ、固定概念に囚われていては足元を掬われるぞ?
[驚くような青年の声にまた嗤いが浮かんだ]
何とも身軽な。
[上空へと逃れる様子に感嘆の声。弾かれた右の籠手頭と空ぶった左の籠手頭は意思を持つもののように宙を旋回し、あるべき位置へと戻る。地面すれすれを駆けていた身体を止めるべく足を地につけ。砂埃を上げて滑り止まり、上空へと逃げた青年を見上げた]
まるで奇術師だな!
[扇状に展開された短剣に軽く眉を寄せた。次いで振り上げられた腕は、地面へと叩きつけられる。周囲の地表が剥がれ、礫が女の周囲を取り巻き宙を舞った。そのうちの一つ、大きめの礫を思い切り上空へと蹴り上げる。途中砕けたそれは散弾となりいくつかは降り注ぐ短剣にぶつかり、残る細かい礫が青年へと翔けた。相殺しきれなかった短剣はそのまま女へと降り注ぐ]
くっ…!
[頭は両腕の籠手で庇ったが、晒されたままの脚にいくつかの切り傷が走った]