随分と謙虚だな。
[カカッ、と籠手に刺さった短剣を振り払うように腕を動かし、それを地面へと転がす。青年へと返す声は常の嗤いを含み。視線は刹那、乾いた音を立てて転がる短剣の方へと向く。尤も、その姿自体は砂埃で見ることは叶わなかったが]
自身をも浮かせる……念動力とでも言うのかな。
それが君の武器か。
手足が動かずとも刃を繰れると言うのは、なかなか厄介だな。
[独りごちるような声は相手へと届いただろうか。ふ、と短く息を吐き呼吸を整えると静かに呪を紡ぐ]
…汝硬きもの、されど個と解せば軟と成す。
[ざざ、と足元がざわめく感覚。それは青年にも伝わることだろう。ゆっくりではあるが、地表の砂が蠢き始めた]