(や。本当に、まだこんな肉欲が残っていたことに、 僕自身がびっくりな訳だけれど…――。)[肉体から解き放たれて、間がないからか。52年寝ていたとしても、精神的には若者だからか。否――この欲は、単純な肉欲ではなくて…――。] 愛してる…――。[頼りない銀の糸が切れる前に、もう一度接吻けて。唇は愛の言葉を紡ぎ、彼女の眦に触れ、耳元を辿り、首筋を伝い、――鎖骨に辿り着けば、紅い茨の花弁を散らす。ファスナーを下した背にある指は、翼のあった跡だともいわれる肩甲骨をなどる。]