サーベルを選んだのも、ラケットと握り手が一番近そうだったからだ。あの翼生物は、……首を落とすも、喉を突くも難易度が高そうだった。[親しみと言う言葉に片目を閉じた。 ポーカーフェイスを保ったまま。]親しまなくて、良い。[イレーネがピアノを弾き始めると周囲の気配に緊張を走らせたのは、彼も同じ。 イレーネが紡ぐ旋律は──鍵盤に向かう彼女の周囲だけが、温かな灯火がともったよう。目を閉じて聞く事が出来ないのが惜しい。]