やぁねェ、その身のこなしをしておいて、それは通用しないわよォ?
[通常ならば違わず深い傷を与えたであろう一閃を、僅かな傷だけで躱す様子に紅い瞳が細まる。そう言葉にした直後、繰り出される突きには一瞬だけ息を飲んだ。上体を反らしながら半身の体勢を取って切っ先を避けようとするも、到達の方が僅かばかり早く。貫かれはしなかったものの、ベストとワイシャツを切り裂いて行った。すぐさまバックステップを取り、青年との間合いを取る]
やン、えっちィ。
悪いけどォ、アタシの心臓は”あの方”のものなの。
残念だけど、貴方にはあげられないわァ。
[左手で胸元を隠して頬を染めた。けれど構えたために凹凸の無い朱線の入った肌が目に入ることだろう。再び足を踏み出すと、相手の左下、次いで右下から斬り上げる二連撃の所作を流れるように行った]