―――!
[僅かに引っ掛かる様な手応え。
其れが肉を裂いたものでは無く、其れよりも容易い衣服だと気付くには
上着の紅の所為か、それとも。僅かばかりの時間を要した。
とはいえ、一瞬にも満たない――極僅かな時間。
然し、刃を交わす場では充分な隙。
況してや、相手が相手だけに 尚更の事。]
…ッ! や、ば
[肉薄する距離。藍が僅かに見開いた。驚愕ではなく、然し紅をその目に捉える様。
振り降ろされる刃は見えども、其れから逃れうる距離では無く。
咄嗟、せめてもの深手を回避すべく左へと跳躍する。
肩口に緋色が刻まれる事は無く、然し代わりに右腕へ走る深い紅。]