[くん、と左足首を動かすと、垂れ落ちていた紅は止まる。けれど完全に治したわけではないため、痛みは残った]
まぁ、治している暇など無いからの。
[呟き眼前へと意識を戻すと、男が笑みを湛えながたこちらへと駆けて来る]
ふふ、そう来なくては。
……あれを試してみるとするか。
少しでも効けば、隙が出来るだろうて。
優れるが故に可聴するか、優れるが故にものともせぬか。
果たして……。
[迫る男を見て口端が持ち上がる。未だ構えず、両腕を大きく横に広げると、吼えるように口を大きく開けた。けれど声たる声は出ず、空気だけが凛と周囲に張り詰めた]