― 地下ダンジョン ―
[青年の姿をした雷獣は、怪しく輝く二本のレイピアを鞘に収めて、腰に吊るした。二本を同時に収めることができるようになっているのは、多分剣に込められた魔力を相殺させるためだろう]
[剣の柄に埋められた貴石の一つは金剛石(ダイアモンド)、もう一つは翡翠(ジェイド)…どちらも青年にとって馴染み深い力だ。彼の主とその伴侶を顕す力であり、一方は彼の力を高め、一方はそれを抑える]
巧い事作ってるよねえ。
[人を傷つけるな、という主よりの制限は、この世界では強制力を弱められている。行き先を告げずに使いに出した主は、この事態を想定していたものと思われた]
自分で来ない辺り、おーちゃくだけど。
[ぼやく口調で言いながら、岩の上に腰掛けて、人待ち顔で入口に向ける瞳は、どこか愉し気だ]