[そんな衝動を治めたのは、あまやかな声。
是と答えて揺れる黒髪。
踊る白羽を緑の眸の視界に納めて。
生きる世界の先を、同じ目線では視れないけれど、
愛し合うことで視れる先を、一緒に視ようと]
痛かったら、爪、立ててくれていいから、ね。
……痛くないように、する、けど。
[熱い吐息に徐々に煽られて、余裕という余白が無くなってゆく。
茂みを弄っていた指先は、最後の布を奪い去る。
二枚の花弁の合わせ目を何度か擽ったのち、
そろりと花の裡に潜り込む、中指。
生前、勉学に勤しんでいた指にはペンで作ったタコがあって。
少しだけ歪な形のそれが、裡を擦る。]