[降り注ぐ銅の槍に、しばし立ち止まって考えた後、少女は犬のぬいぐるみをロープでひっつかんで、そのまま槍に向けて放り投げた。
犬のぬいぐるみはさして驚く様子もなく降ってくる槍を見据えると――]
『ウバゥ!』
[そう遠吠えにも似た、会場中の大気を揺らすほどの鳴き声を放った。
古来より犬の遠吠えには魔を払う力があると言われているが、犬のぬいぐるみは魔力で作られたものを拡散させるもしくは弱める力がある。
なるべく、飼い主とロミに当たる槍を拡散消滅させるように、力を入れていくが、その数本が犬のぬいぐるみを直撃した]
あ……。
[さすがに驚きを隠せない声色を発した少女の上に、魔力が弱まった槍が降ってくる――]