[ふらりと上体が傾ぐ。しかし次の瞬間、びくんと跳ね上がるようにして身体は戻って行った]
───やぁ、危ない危ない。
もう少しで餌(エ)が解放されてしまうところだった。
[跳ね起きた反動で天を向いていた顔に歪んだ笑みが浮かぶ。そのまま前へと顔を向けると、翠だったはずの瞳が紫へと変わっていた]
お嬢さん大丈夫かい?
うちの餌(エ)が血気盛んで済まなかったねぇ。
[倒れるクロエへ向ける言葉は安否と謝罪のものだったが、張り付いた笑みはにやにやとどこか気味の悪いもので。クロエの様子を見ようと足を踏み出したところで、ぐしゃりと地面へ倒れ込んでしまった]
おやおやおや、しまったしまった。
右足は潰されていたんだったな。
全く派手にやってくれたものだ。
済まないね、お嬢さん。
手当てしてあげたいのは山々だが、自分の手当てを先にしなければいけないようだ。
私はこれで失礼するよ。
[相手に聞こえているのかを確かめぬまま、紫の瞳を持つ人物──捕らえし者はそのままずぶずぶと地面へ沈んで行った。後にはただ静寂だけが*残されている*]