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そうじゃのぅ、今んところはなか。
……今んところは、のぅ。
[声の調子はそのままに、歩き出すスティーヴの背中に言葉を投げた。男の闇色と、小猿の視線がその背中を見やる]
じゃけぇ、もちっと人生ば楽しんでもよかろーもんにのぅ。
[男のように楽しみ過ぎるのも問題な気がしないでもない。スティーヴの姿が見えなくなるまで視線を向けていたが、それから別の方へと動かして]
結局まぁたやりおうたらんかったのぅ。
まぁ楽しかったけぇ、良しとするき。
[左腕の血は止まることなく流れるが、痛そうな様子も頓着する様子もない。]
ゼロ。コード・ワン
[その宣告と同時、左手のゼロは元の鋼鳥となり肩へ。そして、]
さあ、『魔術師』の登場だぜぇ
『未元の手(ダークマター・タイプ・アーム)』展開
[その宣告と同時。鋼鳥が弾け飛ぶ──否、コアになっている『魔術師』のカードを中心に、鋼の外殻と彼の血で形作られたのは肩から生える『第三の手』。]
…んむ、ひとぉつば終わっとるのぅ。
もう『向こう』ば行ったかね。
[懐に手を伸ばし、カードの情報から二枚のカードが移っているのを確認する。その移ったカードを知り、仮面の奥で口端を持ち上げた]
なんじゃあ、結局愛おしくてちゃっちゃと向かいおうたか?
顔ば見るんが楽しみじゃ。
[以前の会話を思い出し、可笑しげに笑いを漏らす。懐から手を離すと、再び当て所なく廃墟を彷徨い始めた]
[血を媒介としている。ソレは赤黒くむしろ悪魔の手と言った方が的確かもしれないもの。
そして、使っているものがものだけにグラリと立ち眩みを起こし、頭を押さえつつ、]
…………ああ、先に言っとくけど
これを下手なモンで受けようとしないほうがいいぜ
『食っちまう』からな
[正確には、並のモノなら接触・解析・溶融を一瞬でこなすというのがコレの仕組みなのだが、そこまで説明する義理はなし。
その腕は大きく撓り]
じゃあ、頑張って耐えてくれよぉ
[リディアを押し潰さんと上から襲い掛かる。]
負けるわけにはいかない。
あの子のためにも。
[紅の広がる左肩を押さえながら呟いた。
目の前の男に問うのは個人的な話だ。
最初にカードを手に取った目的とは異なる]
……二言はありませんね。
[痛みと狂ったような哄笑に顔を顰めていたが、ぴたりと止まり変化する空気に身構える。
鋼鳥が変化し巨大な腕となってゆくのを無言のまま見つめて意識を張り詰める]
悪食。
[忠告に短く吐き捨てるよに応え]
――Eismauer.
[剣を横に構えて生み出したのは盾より数倍の規模となる氷壁。
受けた攻撃を同じく返して弾くためのものだが、わざわざの忠告をよこされるほどのものに耐えられるかは怪しい。
自由には動かなくなっている左手を懐に差し入れた]
[痛みは無視してカードの力を引き出す]
『The Temperance』開放。
“ Unschuldsfeld ”
[氷の壁に注ぎ込まれてゆくのは「調和」の力。
荒れ狂う力を包み込みそのバランスを引き戻して「元の形」へと導いてゆく]
っくぅっ。
[だが一瞬でとはいかなかった。
掲げる腕に強い負荷がかかり、肩の傷が更に大きく開き紅が溢れ出して来る]
大人しく、鎮まれっ!
[気力を振り絞って『第三の手』へと力を叩き付けた]
なん…………だと
[『魔術師』の創造の効果を、『節制』の調和の力が打ち消し、指先から血の霧になり消滅していく。]
…………ひはっ。これは予想外
[『手』が完全に消滅し、がしゃんと音を立てて地に落ちる鋼鳥。
それと同時、ラス自身もフィードバックと貧血でどさりと倒れ臥す。]
[どさりと倒れるラスト。
こちらも気力が尽きかけ剣はきえてしまっているが、氷片を一つ残したまま近づき]
私の勝ち、ですね。
まずはカードの方をいただきましょう。
[首元に突きつけながら手を伸ばす]
それから。
14年前、あなたは何をしていましたか…っ。
[くらり。膝から崩れる。そのまま座り込んでしまい、同じよな高さから相手を半ば睨むように答えを待った]
[倒れ臥したまま、眼だけをリディアに向ける。]
…………懐のはフェイクもの。本物はどっちもあっちの中だ
勝手に持ってきな
[そういうと同時、カシャッと少し離れたところに落ちてるゼロの背中からカードが二枚。]
14年前か……きひ
[苦しそうに狂った笑みを漏らしたあと、スッと目を細めると]
そんなお嬢ちゃんにゃ残念な話だけど
俺ってば3年以前の記憶が曖昧になっちゃってるんだよね
コレ、嘘のようなホントの話
もしかしなくても、今のクライアントに何かされたんだろーな
どうも。
[手を伸ばしても届かない距離。
四足で這うよに近づき『魔術師』と『悪魔』の二枚を拾い上げ、懐にしまった]
………。
真実は闇の中、ですか。
[狂った笑みに空色がきつくなるが、変化する表情と続いた声の調子から嘘とも思えなくなった。
大きな溜息を一つ。疲労がどっと倍加した]
……確信がないまま、手を下す気はありません。
無益な殺生は好きじゃないんです。
[下町で生きてきたにしては聊か甘い台詞。
けれども信念を持って言うと何も持たない手を伸ばした]
[チリチリとした冷気は失血原因となる傷口だけでも塞ぐか]
忠告をもらった分です。
血を足すような芸当はできませんのであしからず。
[翳していた手を離すと、どうにかこうにか立ち上がる]
それじゃ、さようなら。
[ゆっくりとした足取りで森の中へと消えてゆく。
途中ずり落ちかけた帽子の影で、三角耳が小さく*揺れた*]
[リディアの言葉と行動に鼻を鳴らすと]
はっ、甘いね
「疑わしきは皆殺し」……「汝、明日の敵の隣人を殺せ」
その甘い信念がきっとお嬢さんを殺すぜぇ
[立ち去る背中に狂った笑いとともに呪いの言葉を投げかける。]
[そうして、リディアが立ち去った後。]
……くっそ、頭がガンガンしやがる
[それは貧血とは違った気持ち悪さ。]
なんだよ、ちく…しょ…………ぅっ!?
[そうして、最悪の気分のまま。
彼は意識の糸を*手放した*。]
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