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……力がある、と偽るのであれば、尚更、隠しておく意味はないだろ。
それこそ、見える場所で伝え、疑惑を撒くものだ。
……先生が、死者の声が聞こえる、と唐突に言い出したようにな。
[息を飲んだユリアンの叫び。それに返す言葉も、淡々として]
嘘は、ついていないよ。
聞いたのは確かな事だ。
[イレーネに返す様子も冷静なまま]
[叫ぶイレーネを静かな眼差しで見つめる。]
うそはついてません。
エーリッヒ様も、うそはつきません。
貴女が視たのでしょう。エーリッヒ様は、人間だと。
判らない、で止まるんですか。逃げるんですか。
考える頭があるでしょう、貴女には。
何故――視てもいないのに、ユリアンが人狼でないと、そう言い切れるんですか。
そこにどんな証拠があるんですか。
色んな人がいるんです。
力に多少の差異が生じることもあるでしょう。
何故、自分が視た者の言葉を信じようとしないのです?
占いの力は、確かに万能じゃない。
そして、いつまで使えるかもわからない。
なら、それにのみ頼り切らずに動くのもまた、力あるものの姿のはず。
アーベルがどう思ったかはわからんが。
それは、占い師として、間違った行いとは言えないんじゃないかな?
[イレーネに向ける問いは、どこまでも静かなもの]
貴方が視る者なら、結論はひとつです。
ユリアンが人狼!
今一度、聞きます。
貴女は、本当に、人と狼を見極める力があるのですか?
……アーベルが本当に力を持ってるんだったら。
俺にはお前らが事実を捻じ曲げているとしか思えない!
何で俺なんだよ!
調べたわけでもないのに!
アーベルの行動だけでお前らはそれを信じるのか!
それがアイツの作戦だったらどうするんだよ!!
普段から平気な顔して嘯くような奴の言ったことを鵜呑みにするってのか!
[錯乱したかのように叫び続ける。
その瞳には信じてもらえない悔しさからか、少しずつ雫が溜まり始めていた]
痛み、など。
感じないようにすれば、感じないものですけれど、ね。
[軽く睨むようにして]
精神的修行の足りない身ですから。
マゾヒスムではないので、嬉しいとは思いません。遠慮します。
…私よりよほど困難な道をいらしたのですね。
それでも美しいと感じたものは、本当に何一つ無かったのですか?
ユリアン。
[押えつけながら、耳元で囁く。]
私はともかく、エーリッヒ様が嘘をつく必要はないはずです。
作戦って、何ですか。
アーベルが嘘つきなら、何故彼は殺されたんです?
ユリアン。貴方がもし人狼でないなら、答えはひとつですよ。
違う違う、そうじゃない!
力に差違?それもアーベルさんが言っていたんですか?
自分の勝手で動いたアーベルさんも、ユーディットさんも、私には信用できない。二人のやり取りを全く知らないんだから当たり前です。
そうです、エーリッヒさんは人です、それだけは分かってます。でもそれだけです。あなたがさっき何か驚いたのも見ました。
私は人が嘘をつかない生物だとは思っていません。
[冷静に返すユーディットに、伏せたまま淡々と返す。]
…私は、最後まで信じられる人は信じぬく。
それが、ミリィが残してくれた遺言だから。
ユリアンは人だと信じています。
だから。
今私に分かっているのは、貴女が、貴方たちが信用出来ないという事です!
[顔を上げ、ユーディットを睨んだ。]
そんなの知るかよ!
人狼の仲間内で何かあったんじゃねぇのか!
[囁きには叫びで返す]
アーベルが偽者だったらてめぇの正体は知れねぇ。
てめぇがついた嘘に、てめぇを信じきってるエーリッヒがただ言葉尻に乗っただけかもしれねぇじゃねぇか!
俺はエーリッヒから、アーベルが誰を調べたかなんて聞いてねぇし!
困難なのかな。
そうでもないかも知れないよ。
感じ方なんて、人、それぞれだろうしさ。
[問いかけを耳にして、僅かばかり、赤は揺れた]
……さあね。
裏があると思えば、美しくとも、そう思えなくなる。
貴方がそう思われるのならそうなのかもしれませんね。
[ゆるく頭を振る]
………。
まだ時間が残されていたら。
ミリィの部屋にある絵を見てきてみて下さい。
それもまた、貴方を変えることは無いかもしれない。
けれど何かを見せてはくれると思います。
/中/
……若干。表が、心配な。
ユーディットは自吊りに仕向けているのであって、
ユリアン人狼だとしても吊る気はないと思うのだけれどな。
尻尾を出してくれれば儲けもの、程度で。
死者の身が恨めしい。
つい中身が出ました、失礼。
――へえ。
そう言えば、描いていると言っていたっけ。
[指先は己の眼の輪郭をなぞる]
気が、向いたらね。
後、見えるようになったら。
/中/
私も同じですので(溜息
少しばかり胃が痛いです。
場がこういう形で停滞するのは一番避けたいものなのですが。
この辺もエピでよく話し合いませんと。
では沈みます。
ええ、気が向かれましたら。
それだけの価値があるということだけはお伝えしておきます。
…見えそうにありませんか。
[この状態は医師として手の出るものではなさそうで。
そも今の状態でそうした治療が効くとはまったく思えない]
石。ああ、耳を気にされていたのはそれですか。
[なるほど、と頷き]
あちらにあるのでしょうかね。
[緊迫した空気に包まれた現実へと、同じように視線を向ける]
さっき、アーベルは本物だと認めてたじゃないですか。
今は、信じられないんですか?
エーリッヒ様のことも信じないと。
では貴女は何も信じないんですね。
……そのユリアンが人狼なのに!
[目を、す、と細めた。]
質問に答えてください。
貴女は、人と人狼を見極める力を持っているんですか?
イエスというなら、私は貴女を信じるだけです。
[ユリアンには、たった一言。
「本当に、『その可能性』が判らないんですか?」と、尋ねた。]
在ると良いですね。
[向ける顔は、どこか心配そうに。
その心配がどこに向いているのかは読みにくいだろう]
どちらに天秤は傾くのか。
そもそも、私はアーベルさんを占い師として認めた、とは言っていませんよ。わからないと、そうしか答えていません。
答えを歪曲しないでください。
[ユーディットを睨み続ける。]
そうです、私は人と狼を見極める力を持っています。
[そう、自分は本当に占い師なのだから。
少なくとも、表に居る自分は、心の底からその役割を演じていた。
欠片も綻びを出さぬよう。
矛盾を生み疑いをかけられないよう。
震える占い師として振舞った。
それが、彼女が受け継いだ、口伝であり、力であり、血であった。。
容易に偽りを口にし、混沌の種を撒き。
決してその心を奥底にある真を見せない
―――――――――狂える信徒の為せる業。]
[可能性が何かなぞ、考えている余裕は無い。
埒が明かぬ状況に、苛つきが頂点へと達する]
……もう、面倒、だ。
[ぽつりと小さく漏らし、押さえつけられている腕に力を込める。
ゆっくり、しかし確実にユーディットの腕を押し返して行った]
……こんなところで……俺は死ねぬ……。
全てに復讐するまでは!!
[尋常ならぬ力でユーディットを弾き飛ばし。
俊敏なる動きで起き上がると、そのままユーディットへと襲い掛かる。
その腕は爪を携えた白銀の毛並みへと変貌し、苛立ちの元となっている女に対し、下から切り上げるように揮われた]
……なっ!?
[二人の問答の様子。
その行方を見守っていた矢先の動きに、対策が遅れた]
……ユーディっ!
[とっさ、抜き放つのは懐の短剣。
間に合うか。
そんな思いを抱えつつ]
[頬杖を突いた侭。
手は、口許を隠すように。
赤い眼は何も映さず。
生者に視えぬ死者に、為す術はない。
手を伸ばしても、声を発しても、届きはしないのだから]
納得した、と言ったのに?
[肩を竦めた。]
そうですか、貴女が本物で、けれど私を信じられないなら。
その勇気を持てないなら。
私が――
[イレーネの持つ短剣を取ろうと腕を伸ばしかけ――]
……ぐっ!?
[ばん、と物凄い力で弾き飛ばされる。
何も判らないまま、――――]
[――――視界が朱で染まる。]
私が納得したのは、アーベルさんがノーラさんが殺された後に取ったの行動だけ―――
[そう言いかけて、目を見開いた。]
――――!!!
[青ざめる、目の前で起こった出来事に。]
[ふ、と口元が斜めに上がった。]
本当に、あなたが。
おおかみ、だったんだ。
[熱。痛み。苦痛。それから、すべて。]
エーリッヒ様――
[朦朧と]
逃げて――
[舞う紅。
それが示すものは容易に知れて。
過ぎるのは、『間に合わなかった』という思い。
それに急かされるよに、ユーディットへと駆け寄った]
ユーディ!
ユーディット、しっかりしろ!
[逃げて、という言葉は聞こえていたが。
それには答えず。
振り返る緑が見やるは、今、紅を散らしたもの]
……そういう、事かよ……!
[先程まで己を強く押さえつけていた女が容易く朱に染まる]
くははははははは!!
何もかも喰らってくれる!
我が力、とくと思い知れ!!
[白銀を朱に染め、その場で高らかに笑い声を上げる。
その瞳は鳶色から紅へと変わり、顔にはいつもの無表情ではなく、惨劇を望み愉しむ歪んだ笑みが張り付いていた]
[遠くなったはずの赤い世界。
そこからの叩き付けるような力に膝を突く。
輪郭が崩れる。人の形を保てない。
だが前と違い、ギリギリ今の意識を掴んでおくことだけは出来た]
『――――!』
[影のような獣の姿で、伏せる。
脳裏に響き渡る哄笑に弾かれないよう、ただじっと耐える]
[響く、笑い声。
左の腕が疼く]
……てめぇ……俺のいる場所で、そんな真似ができると思うなっ!
[宣する手、握られた銀を飾る紅は鮮やかに燃えて]
ユリアン…っ!
[猛り狂うユリアンを呆然と見ながら。]
ユリアン、ああ――――――。
[顔色は、蒼白。
それは信じていた人が狼だったという事ではなく、守られていた秘密が露呈してしまった事への恐怖。]
[渇きがそこにあった。耐え難い渇きが襲ってくる。]
この、じんろう、がっ……!!
[憎しみが瞬間的にユーディットに力を与える。
ポケットから、震える手が突き出された。]
[イレーネに渡したのはただの短剣、しかしこの手にあるのは――アーベルの。]
死ねええええええええッ!!
[狼の右眼に向け、銀の短剣は突き出される。
自分の名前を呼ぶ声が、遠い。]
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