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それでも、行かないと心配かけてしまうかしら。
……何か、食べないと駄目ね。
[そっと絨毯に足をつける。柔らかい。
脱いでそのままにしていた浴衣をたたむと、手早く服を着込む。
広間へ向かおうかしら。
階段を降り、その入り口の手前]
今日は、とても賑やかねぇ……
…むす…め……?
[赤毛の少女の言葉に、唖然としてその姿を見やる。
確かに、癖のあるその髪は義兄に似ているといってもいい。
…年恰好から思わず逆算し……なんといってよいのやら。]
[使用人の少女は包みを受け取ると広間の外へと姿を消した。
それを見送って、すこしだけ肩の力を抜く。
彼は、あれを覚えているだろうか。
わからない。でも、とりあえず自分は賽を投げたのだ]
[牧師のつぶやきにちらりと視線を移して、困ったように首をかしげる]
私はお父さんに会ったことはないからわからないわね。
[ 溜息を吐きつ広間から出れば、ほぼ真正面にローズマリーの姿。思わず、きょとりとした顔で瞬く。]
……ああ、今晩和。
[ 僅か一秒程停止するも、直ぐさま微笑を取り戻して、]
また新しい御客人が来ていましたよ。
……客人では無い方もいらっしゃるようですが。
[そう云って、彼女が入れるようにと横に逸れる。]
[赤い髪の少女がネリーに何かを渡すのを見て、周りを見回し複雑な表情のコーネリアスに目を止める]
……あんたの姪っこって訳かい?
[しかしその表情から、彼がその存在を知らないのかと気付いて]
ややこしい事になってきたな。
[そう呟いた]
[流れるような自己紹介の言葉に耳を傾け]
ウェンディです。よろしくお願いいたします、牧師様、コーネリアスさん――
[そして自身も挨拶を交わす。]
[そして聞こえて来たメイの言葉に、僅かに目を伏せて――]
怪我…ですか…。大事に至らなければよろしいのですが…。
[僅かに唇を噛む。そして年端の変わらない少女の言葉には、立ち入らない方が良いのだろうと判断し、ハーヴェイの言葉には同意を示し…]
そうですか。では本当に短い付き合いかも知れませんね…
[ころころと小さく笑って、広間を出て行く姿を見送った。]
[ネリーが出て行くのを見送って、わたしは再びハーヴェイに向き合う。
ちょうど来た時だったから、少し驚いた。彼もそんな表情だったのが、少し楽しい。]
そう。お客様がたくさんいらっしゃるのね。
……お客様ではないって?
[ちょっとだけ、意味がわからなくって、問い返す。]
[目の前で展開している会話は、何やら予想外と言うか何というかで]
アーヴァインさんの娘さん……。
[見た感じでは、自分より幾つか年下……いつも書かされる用紙には、十三歳とあったろうか。
そんな年頃の娘が外にいる、というのはどうなのか、とか考えつつ]
……なんか、大変そう……。
[思わず、内心の呟きが声に出た]
…いや、その……。
ありうるというか、ありえないというか、ぶっちゃけ考えたくない、というか…。
[額を押さえてくらりとソファーへ座り込む。]
[広間ではアーヴァインの娘と名乗る少女の話題で盛り上がってきている。これでは当の本人が現れても礼の一つも述べられないだろうと思う少女は、使用人の一人に簡単な夜食を用意してもらうように申し出ると――]
私、明日朝が早いので…この辺で失礼致しますね。
[やはり優雅に会釈をして踵を返すと、金の髪を宙に漂わせながら、少女は静かに広間を*後にした*]
[ともあれ、そこは自分の踏み込む領域じゃない、と考え、それ以上の思考は打ち切り。
目を伏せたウェンディの呟きに、そうだね、と返す]
何があったのかはわかんないけど……早く、気がつくといいんだけどね。
ん、お休みなさい、ゆっくり休んでねー。
[独り言めいた呟きの後、広間を後にする背に声をかけ]
……て、コーネリアスさん?
だいじょう……ぶ?
[座り込むコーネリアスに、心配そうに問いかけた]
[ ネリーが挨拶もそこそこに慌しく去って行くのを見送れば、先程の赤髪の少女の件だろうかと思うも、問い掛けられた言葉にローズマリーに視線を戻し、些か説明に迷うも率直に伝えた方が判り易いかと思う。]
……ええ、夕方頃に……、森の方で倒れていた方が。
大分、怪我をされていた様子でした。
今は手当ても済んで、眠っていらっしゃいますが。
[ 何が在ったんでしょうね、と小さく呟く。]
/アーヴァインの私室/
[使用人の少女が包みを持っていって少し経つと、はじめて見る使用人の男性によって、ヘンリエッタはアーヴァインの私室に案内された。
少々奇妙だが、豪奢な調度の整った室内に、はじめてみる館の主がいた。
彼の前のテーブルには、彼女が先ほど渡した包み。
気押されたつもりはない。けれど、僅かに膝が震えた。
促されるままに彼の向かいに座り、ここに来る迄に考えた言葉を頭の中で反芻する。
唇が乾いていた。]
森で……
怪我をして、眠っているとなると、きっととても酷い怪我だったのでしょうね。
……大丈夫かしら
[心配になってしまう。
出て行った少女(ウェンディ)は、頭を下げて見送った]
[牧師に差し出された酒をくいと呷り、少し咽る。]
…いえ、何でも。
[心配そうな様子のメイに短く言葉を返して深くため息。]
後で恨み言のひとつくらい、姉に代わって言ってくるべきでしょうかね、これは…。
[ため息をつく様子に、やっぱり驚いたんだなぁ、と思いつつ。
記憶の中に残る亡き夫人のことをふと思い出して、何となくため息をつき]
……それも、いいかもね。
[ぽつり、呟いた]
……そう、ですね。
既に鳩は飛ばしたそうですが、連絡がつかないらしく。
明日には、使用人の方が麓の村まで行って医者を呼んでくる、と仰っていました。
[ 話の途中、少女二人がばらばらのタイミングで出て行くのを其々に見送る。……使用人の男が赤髪の少女を案内していく姿を認めれば、感動の親子の再会か、将又修羅場かと思いはしたが。]
[後に、ヘンリエッタは何度もその時のことを思い返す。
なぜ、アーヴァインは何も否定しなかったのだろうと。
証拠など、彼の紋の入った短剣一つ。いくらでも誤魔化すことなどできる。
エッタ自身、認めてもらえるとは思っていなかった。ただ、幾ばくかのお金になるのではないかと思ったから、賭けて見ただけだ。
でも、彼は笑って、ではこの館にいなさいと言った。
彼が何を考えていたのか、エッタにはわからない。]
[座り込んだコーネリアスにやや同情的な表情を向け]
にしても…
[姉に代わって、との声に少し真顔で]
言ってやった方がいいんじゃね?
今まで知らなかったってのは問題だろう。
今まで放っておかれたあの子も気の毒だけど。
[それでも、親が居るということは少なからず幸福だとは思うけれど]
[使用人が赤髪の少女を送るのを見るけれど、部屋に送っていくのかしら。と、思う]
あぁ……それじゃあ、まだ手当てはきちんとできていないのかしら?
でもお医者様が来るなら、そのままにして差し上げた方が良いかもしれないわね。
あまり動かすのも、けが人には酷だもの。
牧師さんも知らなかったのか?
付き合い長いんだろう?
懺悔とか……
[もしアーヴァインがそういう事をしていれば彼が驚くはずもないのだが]
[ ローズマリーの疑問には緩やかに首を傾ける。髪は既にすっかりと乾いていて、肩に掛けていたタオルは今はハーヴェイの手許に在った。]
あくまでも素人ですからね。
……とは云っても、俺がした訳ではないですが。
[ 其の後の言葉には同意するように頷いて、]
ああ、中に入るのならどうぞ。
[邪魔をしてしまったかと、そう付け加える。]
−浴室−
[そして彼は、残してきた広間で何が起こっているのかも知らぬままに、のんびり風呂を楽しんでいた。
たっぷりの湯と広い浴槽に、誰もいないのをいい事に少し泳いでしまったのは、まぁお約束だろう。
今は落ち着いて肩まで浸かり、100まで数えてる最中だ。]
98、99、100…と。
[少しのぼせたのか、上気しきった顔で湯船から上がり、身体を拭いて身支度する。汚れた服はどうせ明日帰るのだからと、くるりと丸めて鞄の底へと突っ込んだ。
洗いざらしの短髪がぴんぴん跳ねているまま、一度部屋に戻って鞄を置こうと浴室を出る。]
……ん〜、また謝り損ねちゃったなぁ。
まぁ、鞄くらい置いてからでも間に合うよね…?
[先程、コーネリアスと廊下で擦れ違ったものの、彼はなにやら考え中で。気付かずに通り過ぎて行ってしまったから。少し早足で、階段へと向かう。]
−廊下→ホール−
ん、でもしないよりは少しの手当ては必要だわ。
[ハーヴェイの言葉には、小さく笑ってしまった。]
ふふ、いいのよ。出来る人がやれば良いのですもの。
旅をしている方なら、手当ての方法を知っているのでしょうね。
あら、別に邪魔なんて思ってないわ。
あなたとこうやって話せて、本当に……嬉しいわ
[心からの気持ちを、告げて、わらう。]
―アーヴァインの私室→廊下―
失礼します。
[扉を閉めて、広間への道を歩き出す。
丁度入れ違いに、使用人が少女を連れて部屋へと向かうのが見えた。何となくその背を見送る]
……娘、ですか…
[奥方の子ではないのだろう。でなければ、わざわざ別の場所で暮らす理由は見当たらない。
元の主人のご友人とはいえ、他人の家のことをあれこれ思うべきではないとは分かっていても、知らず溜息が洩れた]
―…→広間―
じゃ、本人も知らなかった、とか?
…再婚、ねぇ。
[ちらりと困惑したままのコーネリアスを眺め]
呼ばれたのって、この事だったりしてなぁ……。
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