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〔今まで憶測に過ぎなかったものが、確信へと変わり、質問が詰問へと無意識に変化していたことに、気づかないまま続ける〕
おい、しっかりしろ!
俺の疑問に答えてくれ!
…そんな、ずるいじゃないか!
お前一人だけ、狂気に身を任せて、クローディアに会いにいけると思ってんのか!
半身とも思える大事な奴に先立たれ、後に残った人間のやるべきことは。
あいつらの命の分まで、後悔せずに生きることだ!
お前は…そんな生き方で…後悔しないのか?
〔シャロンに向き合うと、彼女は、俺を、食べる、と言ったのが、聞こえた〕
〔食べる…それは、死を意味していて…〕
〔シャロンに対して怒りを覚える反面、甘美な死への誘いに抗えない自分が、そこに、いた〕
[外に飛び出し、周囲を見回して。
探していた者の姿は、すぐに目に入ったけれど]
……っ……。
[そこに立つ。女性の姿は。
かつて、人狼の元に走った姉の姿を、容易に思い起こさせて]
…………。
[軽く、唇を噛み締めつつ、その様子を見つめる]
〔シャロンの言葉が頭の中を駆け巡る〕
〔俺を、喰う〕
〔シャロンは人間?違う。違う〕
〔食べた。心臓を〕
〔クローディアの心臓を〕
〔クローディアの、心臓…心臓!〕
…おまっ!
何をっ!
〔目の前が赤い。身体が熱い〕
〔はらわたが煮えくり返るほどの怒りに身を任せ、シャロンに掴みかかった〕
〔感情のままにシャロンを揺さぶる〕
お前が、おまえ自身が、守りたいと思った者を手にかけておきながら、狂うなんて!
許さねぇ。
ゆるさねぇ。
ゆるさねぇぞっ!!!!!
誰だ、お前にクローディアの心臓を与えた奴は!
お前の自分勝手な望みを叶えた奴は!
何処にいる!
〔かなりの大声で怒鳴っているため、周囲には人だかりが出来始めており、武装した自警団員の姿もちらほら見られ始めていたが、構わなかった〕
〔ただ、目の前にいる女が、憎らしかった〕
〔その、細い頤にそっと手を伸ばす〕
〔もう、人狼のことなんて、どうでも良くなっていた〕
〔ただ、目の前の女を、許してはおけなかった〕
溶けて、消える。
いいぜ、一緒に、消えてやらぁ。
〔そういうと、懇親の力を両手に込め、ぐっと握った〕
[人だかりの中、ただその姿だけを探して。
その騒ぎの中心、声を荒げる姿を見る。]
…オッサン……。
[幼いながらも覚えている。優しくて綺麗だった奥さんと、幸せそうだった彼のことを。]
[ランディの手で首を絞められ。
少しずつ意識を失っていく。
誰にも見送られないで。
孤独に。
ただ、自分自身が消えることだけを思いながら消えるのは。
自分らしいと思った]
私は私のままで死ねた。
ああ。良かった―――。
[最後に呟き、シャロンが目覚めない*眠りについた*]
〔もう何も考えられない〕
〔意識は既に、指先にしかなく〕
〔相手の息が耐えてもなお、力は緩められる事はなくて〕
〔見るに見かねた自警団員が引き離すまで、懇親の力を込め続けた〕
…ァァァアッ!!!!!
〔崩れ落ちる瞬間に叫んだのは、誰の、名か〕
……あ……。
[ランディの絶叫。
崩れ落ちるシャロン。
ふる、と首を振る。
微かな目眩]
シャロン……さん……。
[小さく呟いて。
ゆっくりと、そちらへと歩み寄ろうと]
〔シャロンの最後の呟きが〕
〔耳にこびりついて離れない〕
…んだよ…。
お前だけ…。
お前のままで、逝きやがって…。
俺は、どうするんだ。
まだ生きてなきゃいけないのか。
まだ、あいつに、会わせてもらえねぇのかよ。
ちくしょう…ちっくしょーぉぉぉぉぉっ!!!!!
〔涙があふれて止まらなかった〕
〔それは、誰に向けての涙なのか〕
〔流している本人にも、わからなかった…〕
[慌しい自警団員の間を。
すり抜けるようにして。
笑みを浮かべて倒れた女性の所へ。
揺らめく光は、微かに翳るも、確かな白で]
…………。
[それと確かめた瞬間、足の力が抜けた気がして。
その場に座り込む]
[たどり着いたときには既に事は済んでいて。
絶叫をあげるランディを苦しそうな顔で見つめ]
ランディ・・・。
お前・・・、・・・・・・・・・・・・・・。
[何かを口にしかけるも何も言えず、その場に立ち尽くした]
…エリィ!?
[シャロンの亡骸へと歩み寄ろうとして、よろけて座り込んだ姿が目に留まる。
人だかりを抜けて、そちらを目指す。
右手は、無意識に腰に帯びた短剣に触れていた。]
〔誰も彼に近づかない〕
〔近づく事ができない〕
〔広場に座り込み、焦点の合わない瞳のまま、おもむろに懐から煙草を取り出して、かちり、と火をつける〕
〔しかし、それを咥えることなく、ゆらりと立ち上る紫煙そのままに、ぽつり、呟く〕
誰か、俺を。
ころして、くれ。
〔誰か、と言いつつ、願う相手は〕
〔既に、*決まっていた*〕
[飛び交う怒号の中、名前を呼ばれたような気がして、ふとそちらを見やる]
……レッグ……?
[小首を傾げて、小さく名を呟く。
朝から見ていなかった姿を見れたからか。
そこには微かな安堵の響き]
…悪ぃ。…親父が怒ってたもんだから。
[一言短く謝罪して、傍らへと。]
……あのねーさんのとこ、行ったのかな…?
[横たわる女のフードの隙間から見えた口元は、安らかな微笑みに彩られていて。]
会いたいから死にたいって…それってなんか違う気がすんだけどな…。
[ちゃんと生きなきゃ怒るからね、と…そう言い残して死んだ母親の事を、ふと思い出した。]
そっか……ずっと、無断外泊だったもんね。
[怒ってた、という言葉に、くすりと笑って]
うん……会いたいから死にたい……っていうのは、違うと思う。
ちゃんと、生きて、それで。
……生命が尽きた時に、会いにいければ……それが一番いいと思うよ……?
[その言葉は。
安らかな笑みを浮かべる女性にも向けられていたろうか]
…オッサン!!
[うつろな目で、ただ殺せと訴える彼に、思わず声をあげて。]
オッサンがそんな顔してたら、ジュリアさん悲しむだろがっ!!
そんな風に会いにこられて、嬉しいと思う奴なんざいねぇだろっ!!
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