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うん、私も頑張る。
[少年に頷きを返し、その力に自分の中で均した力を寄せる。
聖なる力に支えられ、機鋼界での均衡を。
在るべき姿に出来うる限り近づけようと。
大きく轟いた雷鳴に一瞬だけ身を竦めてしまったのは、支えてくれる麒麟にだけ伝わってしまったかも。
それでもしっかりと目を開いて。
じっと繰り広げられる光景を見つめながら]
価値?
己が消えて、新たな誰かに変わってとられて。
其処に価値など見出せるか。
その弁は、己が在るからこそ言える事だ!
[“己”と、“誰か”。]
[それが、何を指すかは理解されまいか]
[半ば懐に潜り込みかけた体勢では、]
[背後より迫る一撃を避けるは叶わず]
[咄嗟に半身を捻り、]
[向かい来る鎖へと左腕を突き出す]
[弾くまでは出来ずとも、]
[背への直撃を和らげようと]
[左手首の枷から伸びる鎖が、弧を描く。]
「大丈夫」
[息を飲むナターリエの様子に。
界の均衡を支えつつ、セレスは小さな呟きを]
「時空竜、ボクと約束した。『死なない』って」
[だから、大丈夫、と。声は凛と、迷いや恐れはなく]
[雷獣は、その足で屋根を蹴る。真に雷光の速さで、野を駆け抜け、争う二人の元へ。三本の黄金の尾は、野に奔る稲妻の閃きにも見えたか]
[愛し仔の呟きに私は刹那、瞳を揺らす。
「死なない」
その決意は、逆を返せばそれすらも覚悟して臨むという事]
[なれど、迷い恐れなき凛とせし声に、菫青石の瞳には力が戻る。
時の竜が、約束を違えはしないと信じるが故に]
だぁーから! なんでそこで、『取って代わられる』って方にしかいかねぇんだよ!?
過去があろうがなかろうが、そこにいるのは『自分』じゃねぇか!
そうやって自分自身を否定してたら、先になんざ進めねぇだろっての!
機鋼は『創造』……新たなものを創り出す。
だが、本質までは作り変えやしねぇんじゃねぇかっ!?
[苛立ちを帯びた声。
その苛立ちは、どこかかみ合わない理論に向くか]
[光鎖に向けられる鎖。
二つは交差し、勢いは削がれ、黒の一閃は肩を掠めるに留まるか。
いずれにしろ、懐に飛び込まれた状況は不利、と。
翼の力も利用して、大きく後ろへ跳び、距離を強引に開ける]
[守るように抱き込むように寄せられて。
少し肩の力を抜いた。過敏になっててはいけない。
もう一度、自然のままに意識を引き締めなおして。
走る閃光とその先にある姿を瞳に映す]
チッ、
[肩へと走る衝撃]
[痛みは無い。]
[しかし、散る赤は着実に傷を告げる]
“彼”と“僕”は違う、
本質?
……まさか、あれと同じなど、
『創造』は、僕が望んだ事じゃない!
[其は創造を司る機鋼なりて、
創造されし者であるが故に――]
[退く時竜へと追い縋ろうと地を蹴りかけ、]
[動きが止まる。]
" Ik#IRu ... ! "
[彼方へと向けられるコトバ]
[駆け抜けた先で、稲妻は止まり、波打つ雷光の輝きの中]
[そこに立つのは、青年の姿の雷精]
[鋼の瞳が、動きを止めた青を見つめる]
[動きが止まった事を訝りつつ、着地し、態勢を立て直す]
……望んだ事じゃない?
[その言葉には、微か、疑問を感じて]
……なら、君は、何を望む?
何がしたい……どう、ありたいんだ?
他者の一切介在しない、自分の『君という存在の意思』は!
[駆け抜けた雷光を視界の隅に止めつつ。
漆黒の光鎖に、力を凝らし、周囲に巡らせる]
[野を駆けし稲妻。
それが雷精の青年の姿へと変わり、青へと問うを私は見守る]
………アーベル
[本で知りはしたものの、初めて呼ぶ名。
この名が示す本質は――いつの彼であるのだろうか]
……、
僕の意志は唯一つだよ。時空の竜。
自由になりたい。
大切なものなど、
己以外には、何も無い。
他には、何も、要らない。
[己以外の全てのものを、拒絶する答え]
[けれど、何処かが、軋む。]
[痛みは感じない筈なのに] [ぐらりと。]
…創られた器と、産まれ出た心と…
それでも、それは、命だ…
[その言葉は、目前の二人へのものか、それとも、遠く響くコエへのものか…]
ないてるの。
[それは自分で何かを考えたのではなく。
この界に添っていたからこそ漏れた言葉だったか。
小さな小さな、普通であれば誰にも届かぬような呟き]
[返された言葉は、何処か、懐かしさすら感じるか。
それは、幼き頃の自身の想いにも似て]
……違うだろ。
それは……心から求められるものじゃない。
[孤独を律とする時空の者。
彼とて、自身のみでは生きられぬと知るが故に。
かつて自分を慕いし少女の使い魔と、盟約を結び、永遠をわかっているのだから]
……本当は……違うんじゃないか?
[地の奥深くより響くナクコエ。
私は、揺れる世界の中で、遠きそれに耳を傾ける]
[揺れる世界は、揺り篭のよに][嗚呼、泣かないで]
――…―― ………――… …―……
[高く響く、澄んだ五音。天聖が麒麟の歌。
泣かないで、そう願うかのよに。愛しみと慈しみが歌となりて響く]
……違うなら。
機鋼竜に呼ばれることも、惹かれることも。
なかったんじゃないか?
……他に、何も、いらないのであれば。
他者の声も、聞く必要はない……。
[綴られる言葉は、静かな響きを帯びて]
……っ、
[天聖の獣の紡ぐ歌][安らかなる音色]
[眉を顰める][感じるのは][不快?]
止めろ――!
[周囲を省みず][音の方へ][彼女へと][駆ける]
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