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[これは一体何。驚きの中で考える。
……彼も仲間なのだろうか、人狼なのだろうか。
否。と、魂の奥底がこたえを返す。
ならば囁きの通じぬはずはない。
遺体は彼の畑にあった。当然だろう。
旅人を喰らったのは、あの近く。
ならば手近なところに死体を隠す、それがたまたま畑であっただけのこと。
それではこれは何なのだろう。
赤の滲まぬ手の甲を、凝然としてボクは見つめる]
―― 自分の家の前 ――
[不安げな呼びかけ。俯いた]
……ごめん。
ちょっとどうかしてた。
怖がらせたりするつもりはなかったんだ。
ごめん。ほんとに。薬、いるかな。
[ちょっと色々とやっちまった感で顔が上げられない。
片手で首裏を押さえ、ただ頭を下げた]
う、ううん。大丈夫。血も出ていないから平気。
…ちょっと、びっくりしただけ。
[ふるりと頭を振った。
痛みよりも気にかかるものがある。
首を傾げて、じっと俯く恋人を見つめた]
……どんな味がするか、気になった?
[怯えたともまた違う問いを、彼へと向ける]
…、気になる?
[誘うように、ボクは再び手を差し出す。
一歩、二歩。足を踏み出した。
ごく間近に、頭を下げる恋人がいる。
その顔を、覗き込むようにした]
────試してもいいよ。
[彼が本当に齧りついて来たら、どうなるだろう。
彼も人狼になるのだろうか。
そうしてボクは、彼に喰らわれるのだろうか。
その一部になるのだろうか。
…ならばそれも良いかもしれない。甘い、誘惑]
[ヤンチャなどと言われればクツと喉を鳴らした。
ミハイルの用がロランにあると知れば微か首を傾けて]
話があるなら僕は失礼するよ。
[後はミハイルに任す心算か。
ゆら、と手を振り家に戻ろうと歩みだす]
―― 自宅前 ――
ならよかった。でもごめん。
[自分の足先見つめてた]
[そこに向けられた、問い。
おそるおそる顔を上げて彼女を見やる]
………………
[少し血の気が引いていた頬にぼんやり朱が乗る。
ちょっとの間唇をふるわせて葛藤を見せた後]
ええと、うん。はい。ちょっとだけ
[視線が気まずそうに斜めにずれて、もうちょっと酷い理由はなんとか喉に押し込めた。けれど、誘われるように差し出される手。踏み込まれる足。顔が一気に赤くなる。詰められた分だけ後ずさった。目が合う。今度は瞳を逸らせない]
えっ
あ
― 森の入り口 ―
[レイスと別れて一人向かったのは、狼たちが落ち着かない森の入り口。
目的の花は黄色の花で。
優しい香りをしている。
それは村からも見えるような位置に咲いていた]
……えーっと、レイスさんのは、もうちょっと入ったところ、か。
[目的の花を摘んだ後。
レイスから頼まれた薬草の場所を思い返して、森を見る。
朝とはいえもう日は大分高い。
木々にさえぎられていても森の中もそこそこ明るかった]
まあ、大丈夫だよね、きっと。
[よし、と一つ頷いて、森の中に入る]
………ごめん
[とん、と背がさっき下ろした籠に当たる。
情けないことに、そのままばっと背を向けた。
ふらふらどこかぎこちない足取りで逃げるみたいに離れようとする]
……勘弁して。そんなことされたら止まれないよ
傷つけたくないんだ
[追おうと思えばそんな情けない囁きが聞こえるかもしれない**]
[ユーリーを振り返ると、彼は車椅子から離れた所で。
ゆらと振られる手をその眸に映し]
――ありが、とう。
[告げる声はとても小さかったけれど、届くと好い。
ぽたぽたと落ちる血は随分少なくなってきていて、
膝の上の水玉も、少しずつどす黒い色に変化していた]
/*
ここは怯えてあげるべきなんだと思うんだけどww
疑ってあげるべきなんだと思うんだけど!!!
ごめん赤なんだ。どうしようかなああああ!!
…それは、吸血鬼か…屍鬼。
[御伽噺でも、増えるとは見た事が無い。
だが、イヴァンが齧ったと聞けば、眉を寄せる。
――そして思いついてしまった事に、更に、視線を落とした]
…キリルと同胞になりたい、とか。
[人を食べればなれると思っている、とか。
それは詰まり、キリルを人狼だと思って居れば、だけれど]
[小さな声が風にのり届いた。
歩む足が止まり、振り向いて]
――…早く治るといいな。
[ロランを流し見てそう告げる。
男の顔には淡い笑みが灯っていた。
そうして何事もなかったかのように帰ってゆく]
…「人狼」は、治らないよ。
ユーリー。
[見えた男の柔らかい笑みに、胸の内へと言葉を落とす。
それは想いだけでなく、思わず囁きに乗ってしまったけれど]
え…、イヴァン?
[ボクは、大きく灰銀の瞳を瞬いた。
見つめる先に、大好きな恋人の姿がある。
気まずげな様子に、特に理由が思い当たらなくて首を傾げた]
なら、どうして、
[くるりと背が向けられて、びっくりした。
先までの落ち着かなさとはまったく逆だ。
分からないから、追いかけた。それなのに]
吸血鬼か屍鬼…人狼とは、別のものだね…?
[あまり良く知らないボクは、首を傾げる。
車椅子の幼馴染は、だからでもあるのだろう。
ボクよりもずっと物を良く知っていた。
だからこそ頼るところも大きいのだが]
ボクと……、同じに、
[こくりと唾を飲み込み、背を向けた恋人を見る。
もうばれてしまっているのだろうか。
そんな素振りはない。ないと思うけれども]
[森の中をあるくとか、そんなに得意ではない。
というかどっちかというと、あまり森に入らない生活をしていた。
きてもせいぜい入り口あたり。
そんな状態だから森の中ではちょっと慎重に歩いている]
……やっぱり、ちょっと怖いかなあ……
[歩きなれていない上に、狼のことがあるから、些細な物音にびくりとしてしまう。
薬草のある場所まではそう遠くない。
ゆっくりと歩いていても15分もかからずにたどり着く]
――うわあ。
[薄暗かった。
薬草が好む場所のせいなのだろうけれど、木々がぎっしりと枝を鬱らせていて、かすかな木漏れ日が届くぐらい。
そんな場所の足元に、そこそこ生えている草が目的の薬草だった]
……早く終らせて、帰ろう。
[きょろりと周囲を確認してから、しゃがみこんで薬草を採り始めた**]
[ユーリーの言葉に、烏色でじっとその淡い笑みを見た。
それから被さるミハイルの言葉に、ん、と頷いて]
暇なら来てもらっても、と思ったけど、
ユーリーも着替えたいかも。
怪我は多分、してないと思う。
[自分が把握する限りでは、だけれど。
それからミハイルが口を深く笑み刻むものだから、
少し、口角を上げてしまう。
そして彼に車椅子を押してもらい、自宅へと戻る。
広場からほど近いロランの家は古く、玄関も軋む音を立てた*]
[ミハイルの声が男の背に届く]
僕はこの通り、大丈夫だよ。
[二人の方を向き答えた男はそのまま後ろ向きに歩んでみせた。
歩調は軽く澱みなくあれば怪我はないと知れよう。
笑みをみせてから、再び背を向ける。
ユーリーがこの村を離れぬのは
この村と村に住まう隣人との関係を好ましく思っていたから]
…皆が人狼になれば、殺されたりはしないかも。
でも…
――それでも、飢えて死んでしまう。
[隣の村までは、どれくらいだろう。
ふと、この集落全員が人狼になり村を襲いながら遊牧する、
そんな夢想を描き、微かに苦笑めいた気配を浮かべた]
……誰かを、襲う、とき。
齧って暫く様子をみてみようか。
[そんな事は無いと思うけれど。
もし可能性があるなら、価値はある気はした]
…え?
[キリルの切迫した言葉に、驚く声を返す。
そんな心算は無くて、ああ、漏れていたのか、と思い至り]
ああ、ううん。
怪我を、治ればいい、って言われて…
――まるで、人狼が治ればいい、って言われた、
みたいだった、だけ。
…気付かれていないと思う。
御伽噺の…「見分ける者」、だったかな。
そういうのじゃない限り、すぐには、判らないと思う。
―― 自宅 ――
[濡れた衣服が気になるようで足元へと視線を落とす。
人の居る場所では微塵もそんな素振り見せずに居たが
肌にまとわる冷たさには少しだけ参っていた]
水浴びには少し早かったなぁ。
[微か苦い笑みを浮かべ廊下で濡れた衣服を脱ぐ。
其れらを摘むと洗濯籠にほおりこみ
手早く着替えを済ませた。
ふと、廊下をみればぺたりぺたりと濡れた足跡]
そのうち乾くだろ。
[ぽつと零しそれはそのままにしておいた]
皆が人狼に?…ふふ。
そうなるなら、もう少しは気が楽かな。
[それでも飢えると言われれば、そうかとも思う。
その一方で、この小さな村を食べつくしてもとも思う]
───…ん。
その可能性があるなら、やってみるのもいいかな…。
[若干口調が曖昧になるのは、血に酔った時に止まれるか、
その自信があまりないせいでもある]
…夜になる前には、相談をしよう。
紅い月が天に昇ったら――
こうして話も出来ないかもしれない。
…食い散らかすよりは、
一人を食べ尽くす方が
バレない事に関しては良いと思える。
[血の匂いが身体の芯から湧きおこる飢えを呼ぶ。
ものたりない、じゃ済まない。
――足りない、飢える、――]
……駄目、なのに、
[今はまだ陽光見えるその空に、月が忍び寄るを感じる。
自身を制する理性の声は、もう、蚊の鳴く、*程の*]
怪我を、…人狼が治ればいいってみたいに?
ユーリーが?
[語尾を上げる調子。
続く言葉に、ボクは眉を顰める]
見破るもの。いるのかな。
人狼がいるのだから、いるのかな……。
[残念ながら、オリガからは何も聞いていなかった。
彼女の兄には幸いであったろう。
人狼の天敵たるもの。
その存在を知られることがなかったのだから]
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