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…あっちゃ、来客中かー。
[ゴメン、と小さく謝罪を告げれば
続く言葉に、一瞬僅かに目を見開いて。]
…まぁ、誰が来てるかわっかんないけど…近いかも?
簡潔に用件を尋ねちゃえば
ユリアンにぃが"ミリィをあっちに送った"のか、って事を
…今一度、ご本人に確認しに来たんだけどさ。
[いつもの口調で問いつつ、目の前の本人をじぃと見上げて]
[思い出しかけたことは、何だか全部すっ飛んでしまって]
[妙に凹んだ気分で、また黙々と。気付けば足は広場のほうへ]
…ん。
[見覚えのある緑の外套が、人波に紛れて見えた気がした]
[確か昨日、いつの間にか居なくなっていた騎士が身に着けていたものだ、と思い至る]
[少女は、何かを決意した顔で、立ち上がり、ユーディットの手を引く]
それじゃ、確かめに行きましょう。
[言った途端、周囲の風景が変わる…目の前には、ミハエルと、リディ、そしてユリアンの姿も見えた]
[投げられた問いは、予想していた通りのもので。
知らず、苦笑が浮かんだ]
……ああ。
俺が、送った。
[それから、表情を引き締めて。簡潔に。問いに答える]
[昨日も通された店内に入る。そこはほとんど昨日とかわらない空間で。]
……なんでも、ユーディットも”妖精”だったんだって…
自分が妖精だから連れて行け…と言ったそうだ。
[多種多用なランプが置かれた店内は静かで、
大きな声で話しているつもりはないのに声がよく響く。]
……ミハエルが…「主として、失格だな」…とも言っていたな。
[その時のミハエルの表情を思い出し、青年は俯く。]
未亡人 ノーラは、騎士 ダーヴィッド を投票先に選びました。
[屋台のどこかで見つけたはず、と、
大通りを子供は歩く。
そこの中の、そのお店。
スープを売っているけれど、
一緒にホットミルクも売っている。
当然、購入。]
[男は天を仰ぎ、微かな声で旋律を紡ぐ。
緩やかな音の流れは雑踏に紛れて消えていく]
[ふと、誰かの視線を感じて。
自然と顔を其方に向けた。
誰とも顔を合わせないようにと思っていたのを、一瞬、忘れて]
……こんばんは。
[ノーラが此方を見ているのが判れば、薄らと笑みを浮かべる]
[…椅子を勧めると、自分も椅子に腰掛け…近くにあった緑を基調としたランプに火を灯す]
…あの子が…ね。
なるほど…だから…あんなに。
[初めて出会った時、あんなに寒そうな格好で。
あんなに、人見知りをしていた仕草で。
物珍しそうに目を向けていたのだろうか。
軽く視線を落とし…]
…多分…舞姫、妖精自身が踊っちゃったから、王様が…
怒った、って。思ったんじゃない?
[外とは違い、声は喧騒には飲み込まれず、沈黙を破る。
その落差は耳に声を通らせた]
ミハエル、さん…が、か…
あの子、そう言う所、ちゃんと気をつけてそうだからね…
…でも…今回のは。あの子の、決めたことだし…
色々と、重なりすぎた部分もあるし。
『そう、意地。
それを創り上げる事が意地。
『人として』残したいもの。
そう言ってた。
ぼくら、人と近しく交われても、人になる事は容易くない。
そして、フェーンは。
人になることを選べない。
だから、人として残したいんだってー。
まあ、考えすぎの大バカなんだけどねー』
[最後に、さらりと真理を言ってのけているような]
[急に立ち上がったミリィに手を引かれ、雫の散る睫毛を震わせて、決意に満ちた少女の顔を見上げる。]
確かめ…るって………きゃぁ!
[ふいに、ぐるりと景色が変わり、見た事のない部屋
――工房にいる事に気付く。
ユリアン、リディ、それから…ミハエルがいる事にも。]
ごしゅじ……っ。
[口を付いて出ようとした、言葉を寸前で飲み込む。
彼女にはもう、少年を主と呼ぶ権利も義務もないから。]
[やがて飲み終えると、子供は頬笑んで、
そのコップを、そっと店主に返す。
身体は温かい。
声はないけれど、
大切なひともいる。
なつかしいような気もして。]
色々、詰めないとなぁ。
[ぽつり、星を眺めて、呟いた。]
[誰がいても
誰がいなくても
そんなの子供には関係のないこと。
結局のところ、
さらわれた人をみても、
自分がかわりに出ようとしない妖精が、
子供にとっては一番悪いから、
後は気にしないことにしただけ。
誰が妖精だとかも、
もう、気にすることはなく。]
……そっか。
[それ以上、返す言葉も見つからずに小さく溜息を吐いた。
……その返答も、予想していた物だったのだけれど。
ずっと右手に握っていたそれを―――ぐ、ともう一度強く握り締める]
―――そっか、うん。そーか。
判った。納得した。
……――――っユリアンにぃのバカっっ!!
[勢い良く振りかぶって。
右手を離れたペンダントは、相手の額へと目掛けて]
[そして、その場から反射的に逃げようとして――彼女の手をしっかと握ったまま、ミリィが固まっている事に気付く。]
……ミリィ…?
[――思わず、心配になって、そっと声を掛ける。
そんな彼女は、実はユリアンとミリィの仲を、ちっとも知らないままだったり。]
…大馬鹿だな。
[こくりと頷いた]
全く。大馬鹿者だ。
[次いだ言葉は、ユリアンに向けられたものではなかったようで。
遥か遠くを見るように視線が僅かに逸らされる]
[店内が緑の光りに包まれるのをぼんやり眺めながら
勧められる椅子に、礼を言って腰掛ける。]
……色々重なり過ぎた部分か……
なあ、それだけで納得しちゃって良いのかよ…
ユーディットが舞姫を踊ったのは知らなかったが
もし、イレーナの考え通りなら…あの娘さんだって……
[続く言葉は飲み込んで。]
……ユリアンと話しはしたが、
親子喧嘩でここまで巻き込み、巻き込まれって…
……んなっ!?
[突然投げつけられたそれに一瞬戸惑うものの、反射的に手で受け止める。
伝わる感触は、知っているようないないようなだが、それは置いておいて]
……ああ。
バカだよな、どうしようもなく……。
[かすれた声で、呟いて]
[短くなった髪はさっぱりしている。
子供は、大人たちに挨拶をして、部屋に入り込む。
子らはきっとまだ帰らない。
帰ってくる前に……]
[少年が遠くを見た事など、特に気に留めた様子もなく。
ネズミが見つめるのは、銀の燐光をまとう花冠]
『ほんとに、バカで困るんだよねぇ。
……どうすれば、いいのか。
答えは持ってるのに。
ためらってる。
怖がってる。
他に方法がないの、知ってても。
なんで言えないんだろうね、「力を貸して」って、一言が』
[独り言めいた言葉は、僅か、苦笑の響きを帯びていたか]
リディ!やめ…!
[…て、と止めようとした言葉は間に合わず。しかし、ユリアンが傷つかなかったことに、ほっと息をつく]
ああ、もう…どうしよう…私…
[落ち着かな気に揺れた柘榴石色の瞳。知らず知らず、ユーディットの手を握りしめている]
[礼を言って、腰掛ける]
[何時もと変わらない賑やかさ。きっと、消えてしまった人のことなど知らないから]
[それとも、騙されているのは此方のほうか]
……如何して、こんな事になったんでしょうね。
[呟いて]
[繕われる違和は、もっと大きな違和に誤魔化された]
…あの子が決めたことだもの。
あたし達が…どうこう言える問題じゃないわ。
[アーベルの言葉にはポツリ、と…]
…あの子がミハエルさんを見て…嬉しそうにしてた。
それでも、彼女は決めたのよ?
多分…自分にも、非はあるのではないか、って。
そうじゃなかったら…彼女が、志願する…理由が、無いわ。
[じ、とアーベルの方を見つめ…]
この、舞姫の事がなければ…あの子は、ミハエルさんの元で働くこともなかった…
居なくなった今…
あたしは…それが、全て…無駄だとは、思わない。
[瞼を閉じると、瞼を開き、ユリアンを見つめ]
…ユリアンは…なんて、言ってたの…?
「…大馬鹿だな。」
[ふいに耳を突いたミハエルの声に、びくっ、と視線を向ける。]
「全く。大馬鹿者だ。」
[僅かに逸らされた視線は、見えるはずの無い彼女を見ていると同時に、何処か遠くを見ているようでもあって。
いたたまれずに、瞳を伏せる。]
[石を受け止められれば、ギッと睨む様に見上げて]
……っ、バカだって判っててやってるんなら、もー本当バカっ!
ミリィの事連れてっちゃう様な妖精の言うことなんて
一生信じない事に決めたんだからっ!
[肩で息をしながらも一気に捲くし立てて。
ミハエルが奥から出てきたのを見れば、一瞬きょとんとしつつ。
来客が彼だと判れば、あぁ、と頭の端で何処か冷静に納得して]
……あのな…あの子が決めたこととか綺麗事で済ますな。
あの子がそう決めようと思った要員が何かを考えろよ…
そう思ってしまった原因。
あの子に非があるかないかは…知り合いじゃないからわからない
けど、もっとその原因に関わっていたら変えられたんじゃないのか?
嬉しそうにしてたあの子がそんな選択をしないですんだかもしれない、
そうじゃないかもしれない…
ミハエルだってあんな表情しないで済んだかもしれない、すまないかもしれない。
彼女の選択が無駄だとは思わない。
むしろ、彼女の犠牲は他の人の否犠牲だ。
けど、毎回誰かが替わりに犠牲になるのか?
その原因がなにかを知っているのにアンタはまだ傍観を決め込むって言うのか?
[イレーナの目を射るような目で見る]
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