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心の底から。
[小さく繰り返す]
オレ、さ。
このどたばた始まって、その根っこにあるのが『願い』って聞いて。
それからずっと、わかんねぇんだよな。
オレにだってほしいものあるし。
叶えたい事あるし……ま、それって無理だけど。
でもさ。
……上手く、言えねぇんだけど。
たくさん、色々、哀しませて、それで叶う願いって、寂しくねぇのかな……?
オレは……たくさんを哀しませた『願い』を託されて、生きてて。
……すっげ、寂しいんだよ……ね。
[呟きは、とても小さなもの]
…っ
[蝙蝠が叩き込んだ欠片のひとつがみぞおちにヒットし、体を折って飛んでさがる。
鎖を戻し睨むと、もくもくとした雲のようなモンスターに変容するのが、見えた。]
…雷、その始点の雲、ですか…
物理的に攻撃しにくそうですねぇ、これはまた…!
[宙に浮くそれから注意は外さず、ザムエルとエルザの方も視線を飛ばす。]
ノーラ……?
[当然、影を使役するのは、彼の竜でしな成し得ない訳ではあるが、それでも、ここまでの力を使用するべき場面とは一体?]
……再会の喜びや、情報交換とかは後回しにしたほうが良さそうねぃ。
ノーラが影を使役しようとするならば、この先にノーラの姿があるのは明白。
その場所に行くのが先決ぽいですわぁ。
[言いつつも、影が向かう先へと走り出す]
ブリジット。
そこの仔のフォローは任せるわよ。私はあまり面識もないですしねぃ。
――…!
[自らの影が奪われし行く先――強大な影が視界へと入る。
其の姿か力にか幼子は小さく息を呑んだ。
無理も無かろう、その姿は私ですら圧倒される。]
…っ ノーラ、
[水竜殿や、氷竜殿から掛けられた声にすら幼子は気付かぬ様子で
新緑の足跡を残し、其の足は竜の姿がある中庭へと向かい始める。]
[半分見失いながらも、なんとか他の影が向かう先も計算に入れつつ、走り続け―――辿り着いた場所は、影と精神のいる中庭。
そこでナターリエは、巨大な影の竜と化しているノーラを見つけた]
影と、精神が、対立している……?
っと。精神がいるなら考えてる暇ない、か!
[すぐさま視線が通らない物影に隠れて、自身は水鏡を移して、その鏡が映し出す映像で、中庭の様子を眺め始めた]
―中庭―
[影が集まり、黒にも深紫にも見える巨大な竜へと変わる。
それは【影竜王】の姿]
――『神斬剣』をどうぞ、【影竜王】よ。
[黒の腕輪を奉げ持つように青年は微笑む。
影輝の力と精神の力、二つが混じり合い、腕輪は剣の姿へ]
『真・聖魔剣』と成し、『律』をお断ち下さい。
[もう一つ必要なのは【皇竜王】と『聖魔剣』
ギュンターと竜都を引き換えに、エルザを、もしくは野心持つ天聖の竜を見つければいいと――…]
─西殿・地下階段前─
[掴んだそれを袖から投げ出すように引き出す。カカッ、とぶつかる音がして、その手に現れるは銀色の長い棒。ミリィが捕えた欠片に突きを放とうとして──目の前へと飛び込んでくる変形前の欠片]
くっ…!
[突きの形から変じてこちらに飛んでくる欠片の叩き落としにかかる。一つは棒に打ち落され、そのまま消滅。しかしもう一つ飛んで来ていたのには反応が遅れた。反射的に左手で払いのける。さした威力もないそれは消滅させるまでには至らず。地に落ち変形を始めた]
……ええい、厄介な。
[形作りしは人型。ただし、その材質は、岩石]
己が属たるものへ変化するとは…。
やりにくいことこの上ないのぅ。
[短い舌打ちをし、その相手へと相対す]
―東殿・回廊エントランス―
ええ、分かったわ。
[水竜へとこくり頷いて]
……っ、リーチェ!
下手に見つかったら大変だから……っ、待って!
[幼子を追うように、中庭へと掛けていく――]
/*
我慢してきた。
ずっと我慢してきた。
だが、ダメだ。
これだけはいわせろ。
皇竜『王』じゃねえええええええええええええええええっ!
「すめらぎ」と「おう」を重ねたら、わけわかんねぇだろうってばよ(号泣)
[蝙蝠を見て、そちらへと肩当てを飛ばすもゆっくりのような早いような動きをする雲の化け物に阻まれ、舌打ちをする。
ばっとエルザとザムエルへ向き]
蝙蝠が、あちらへ!
きっとあそこに!
[声だけかけ、パリパリと音をさせて髪を逆立たせていく。
雲の化け物は、ゆっくりと腕のような部分を延ばして来、それを手から電撃を放つ。
宙の水分を伝い、雲が紫色と白色に光るが大したダメージは与えられているように見えず、眉を顰めた。]
[やってきた竜達の気配に青年は振り返る事なく、気配を生む]
邪魔はさせません。
[青年から生まれた混沌の気配に誘われるように、混沌の欠片が中庭に集い出す。まるで影が集まった時の再現のように]
―西殿・回廊食堂前―
寂しい、か。
おいさんにもその気持ちはすっげー、よく分かるなぁ。
[よしよしと、ティルの頭を撫でる。口調は軽いが、別にからかっているわけではない。
いつの間にか、床からは倒れ座り込む格好になっていた。]
…叶える為に必至になって、その後の事なんざ、見えてない奴が多いんだろうな。
[それは今のアーベル叱り、オティーリエ叱り。
そして己の片翼叱り。]
[ミリィの声に顔をあげ、消え行く蝙蝠を視線に捉えた]
御師様、エミーリェ様。
すみません、お任せします…。
[蒼白い光宿した左手を翳して、一瞬の間を計る。
二つのカケラが変じたそれの、合間を縫おうと]
< 捧げられる剣。
竜は螢火を宿した眸で青年を見下ろす。
首を擡げる動きにつれて、影が揺らぐ。容は定まり切っていない。
逞しい腕の一本が伸ばされ、鋭い爪先が剣へと近付き――
触れた瞬間、白と黒の二色が弾ける。
反発。
揺らぐ天秤は、大きく傾いている >
…っ、ノーラ。
[駆け出した先の中庭へ幼子は戸惑いも無く足を踏み入れる。
水竜殿が身を隠している理由など、仔には些細な事である様であった。
ざわりと、仔の足跡を新緑が繁る。
尤も――その根元に足元に、影は、無い。]
……っ、
[庭の中程まで来した頃か。
見覚えのある欠片に囲まれ、幼子は漸く足を止めた。
触れてはならぬと記憶している。――しかし自らに様が在るは、この先。]
……っ、ノーラ!
[声を上げる。影竜殿が、気付いてはくれぬかと。]
─西殿・地下階段前─
[ミリィに言われ、視線を転じると蝙蝠が地下へと消えて行くのが辛うじて見て取れた]
あやつが居ると言うことか!
エルザ!
[声を張り上げながら棒を岩石へと振り下ろす。ガキン、と金属同士がぶつかるような音を立て、そのまま鍔迫り合いのような状態に]
お主は先に地下へ行くのじゃ!
ここは儂らで抑える!
[階段への道を作るべく、欠片の気を引き、大きく立ち回った]
[エルザに路をあけるよう、雲に自ら突っ込み押さえつける。
質量があったりすり抜けかけたり、ふわふわやわやわとややこしい化け物だ。]
ザムエル殿、敵を交換しませんか?
どうにも雷が通らず厄介ですが、土で固める事なら出来るでしょうか。
そちらの敵は、私が雷撃で砕けましょうか。
[口調は軽く、だが声音は真剣に。
ギリ、と、欠片の変じた化け物を睨みながら、背の方のザムエルに向けて言葉をかける。
近くを舞う琥珀には、気づく事が出来なかった。]
[精神の言葉で、周りに混沌のカケラが集まってきたのを感じる]
切り札の……切り時かしらねぃ。
[静かにそう言って―――ゴポリ―――と、ナターリエが口から『混沌のカケラ』を吐き出した。
それは、混沌に属した属性無き、『虚無のカケラ』
だが、長き間にわたってナターリエの中にしまいこまれたそれは、流水の属性を僅かながらも有した。言わば、流水と虚無のコラボレーションである]
『力ある剣』……奪ってきなさい。
[混沌のカケラ如きが、『力ある剣』を手に取ることが出来るはずは無い。
だが、一瞬だけでも弾き飛ばすことが出来るのならば、それだけで充分。それに、他の混沌のカケラに混ざってしまえば、見分けることは難しいはずだ。
混沌と流水のカケラが、ナターリエの命令通りに、『力ある剣』へと飛び掛る―――]
[反発は剣を奉げる、否、現在の所有者である青年の手に衝撃を与える。だが眉を少し寄せただけで、奉げる姿を解きはしない。
危険の警告である痛みを切り離し、『願い』を叶える為に]
――…どうか、『律』を――…
[精神の力を剣に侵食させ、反発を抑えようと試みながら願う]
[頷きを、感謝を返す間もあればこそ。
闇に閉ざされた階段を一気に下る]
[青白い光が細く照らし、その周囲を琥珀が舞う]
[チリリと走った胸元の痛みに唇を噛み。
手の届いた扉を開け放った]
……撫でんなっつてんだろ。
[少しだけ、むっとしたように言って]
周り見てねぇ願い。
[それもわかる。
かつて幼き竜が、虚無の因子に触れたのは、外界への憧れ故だったから。
覗かれた影響か、他に作用があったのか。
記憶の封は、緩く解けて。
過去に己が成した事は既に記憶の内]
……後から後悔できるんならいいけどさ。
あいつらがやろうとしてる方法だと、それもできねぇんじゃねぇの?
……おっちゃんは、それでも、それが見たい……?
[そして、我が身は混沌のカケラの中を無理に進み出て、自らの目で中庭の前景が見える位置へと移動。
その代償は、混沌のカケラによる一斉の攻撃。傷は浅くない]
さて、結果は何なりや―――?
[ナターリエに、次の手は残されてはいない]
名案じゃな。
己が属では効果も薄い。
[ミリィの案に同意し頷く。階段傍から離すべく、弾くようにして鍔迫り合いから逃れた。岩石が一・二歩、後方へと後退る]
倒してエルザ殿を追わないと…!
失礼します!
[ザムエルの肩に手を置いて、前へと飛び出る。
2本の鎖を両手でピンと張り、両側に落ちる肩当てがぶらりと揺れた。]
……はっ!
[青白い光が鎖を伝い、肩当てへと集まって行く。
< 幼児の呼ぶ名。
青年の称す位。
螢火の双眸が移ろい、影の一旦が零れ落ちた。
微かに、【影竜王】を象ったものが、崩れる >
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