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[向うは、「アトリエ」。
彼女は何処を歩いて居ても、余りそれを不思議に思う者も居ない。]
[そしてやがて絵師のアトリエに着く。
扉をノックするも、返事は無い。]
こんばんはぁ!
へ?!
え、え、いえ、どういたしまして、なのだ。
………よかったのだ。健康が、いちばんなのだ。
[お礼を言われるような事をしただろうか、
苦手意識をもっていた相手の微笑みをみて、何度も何度も瞬きして]
[真っ赤になった]
─図書館前─
あれ? ミハエル。まだいたん。兄ちゃんは大丈夫だったん?
……そっか、それはよかった。ん、じゃ、またな。
[ミハエルと軽く挨拶を交わし、図書館へ入ろうとして、そこで会話してる面々に気づく。]
んー、こんなところで何話してんだよ。
てか、あれ、なんか解散ムード? 話に乗り遅れちったか。
あぅ、ミハエルさん、
さよなら、また会いましょう、なのだ。
[つま先立って、ミハエルへ手を振り]
あ、と。
あたしも診療所に行かなきゃ、なのだ。
……あの、ありがとうでした、のだ。
[おずおずとオトフリートにも挨拶して踵を返す]
む、む。
おとこのひとと少し話せちゃったのだ…。
[謎な独り言を呟いて、診療所への道をたどり始めた*]
ちゃんと飯は食えよ。
[帰るというミハエルに、絵師の分もと、そんな声をかけて、なぜか赤くなっている少女に首を傾げていると、常連となっている青年の声がした]
ユリアンか。そうだな、そろそろ時間も遅い。帰宅する者の方が多いだろう。
何か見たい本があるのか?
いないのかしらぁ?
[扉のノブに手を伸ばし、握ってみる。
それは、あっさりと開いてしまった。]
…あら?あらあら?
[扉を開いたまま、
そうっと中をのぞきこみ、足を踏み出した。
中には人は、いないようで。]
こんばんわぁ…?
ああ、気をつけてな。
[人慣れない様子の少女に、少しだけ心配そうな目を向けて、しかしそのまま見送る。診療所に薬師が戻っていればいいが、と考えて、ふと先刻彼女と交わした会話を思い出して、ユリアンを見た]
そういえば、お前、薬師殿に何を言って怒らせた?
[会釈をするベアトリーチェにこちらもぺこりと会釈。]
あー、ですよねー。あれっすよ、夢に向かって走ってると時間の感覚がなくなるってやつ。
[ようは夜更かしで生活環境くるっとるだけです。]
そうそう、裁縫とか編み物の本見せてほしいんだわ。
はえ? なんでそこであいつの話が出てくんですか?
んー、何か馬鹿を直す薬はないとか、赤子になる薬とか。
失礼っすよねー。
[いいえ、あなたの方が万倍失礼です。]
裁縫に編み物?
[さすがに怪訝そうな表情になった]
・・・・・・花婿修行か?
[花嫁と言わなかったのは、微妙な常識のボーダーが働いたかららしい]
まあ、有るにはあるが、そういうものなら、本を読むより実際に上手な人から習う方が身になると思うがな。
こんばんわ…
[ゆっくりと、だめだと思いながらも部屋の中へと足を進めてしまう。
何かに、惹かれ引かれるように――]
……ぁ………
[そこにおいてある、「絵筆」
引かれ惹かれるのは間違いなく、それで。]
[そっと手を伸ばした時、誰かが入ってくる音にピクリと手を胸元へと引き戻す。]
[薬師の話については、ある意味予想を裏付けた答えで]
ああ、なるほど。
[一瞬、哀れむような色を瞳に浮かべると、それだけ言って目を逸らし、図書館のドアに手をかける]
読んでいくなら入れ。だが、中で寝るなよ。
[寝ぼけて本に涎でも零そうものなら叩き出すと、言外に匂わせて、先に立って扉をくぐった]
花婿? ……はえ? なんで??
[本人としては丈夫な球皮が欲しいだけでそういうことを考えていないので、完全にはてなマーク。]
んー、そんなもんっすかねぇ。となると、リディか。あるいは、エルザもわかるかな。
あ、あの、ごめんなさい。
その…
[現れた少女は、落書きをした壁にぶつかっていた娘。
怒られるかと思ったのだけれど、そんな事は、無く。
ふたりで、絵筆に手を伸ばすと絵筆の上でその手同士が触れた。]
[そして、なんだか納得してるオトフリートに再び首かしげ。]
えー、なに納得してんすかー?
てか、なんすかその養豚所の豚を「かわいそうだけど あしたの朝には お肉屋さんの店先にならぶ運命なのね」ってかんじに見てるような目は。
ところで、豚ってどんなんなんっすかね。美味しいんでしょうか?
[ひどく脱線。そんなこんなで中に招かれると、それについていき、]
えー、寝ないっすよー。知識に触れるのに寝るなんて勿体無くて仕方ないじゃないっすか。
・・・・・・
[書庫へと向かいながら、しばらく黙ってユリアンの言葉を聞いていたが]
少し黙れ。
[返答も何も一言で終わらせると、リクエストの本を探しに石の扉の向こうへと姿を消した**]
あの、えと、その…
[手が重なったまま
それは絵筆を握り締め
顔には笑顔を浮かべてにこりと笑う。]
これがあったら…
そとに、でれる、のよね?
[首を傾けて彼女に問う。
彼女はなんと答えるだろうか。]
ね、これ持って出たら怒られるかしら?
絵筆なんてきっと、いっぱいあると思うの。
だから気がつかれないわ?
[にこにこと無邪気な笑みは
無知ゆえなのか それともわざとなのか。]
ね、あたし…「もどりたい」の。
だから、とめないで?
[とめるどころか
彼女はきっと、同じように。
そうしていくつか言葉を重ね、
ふたりのどちらかがその一本の絵筆を
持って帰ることになるのだろう**]
[中に入ってほかの客がいないことをいいことにぺちゃくちゃ喋っていたが、一言の下に切り捨てられると、ぴしりと固まり、]
…………………スミマセンデシタ、静カニシマス。黙ッテマス。
[だらだらだらと滝のように脂汗を流しながら土下座。
そうして、オトフリートが本を持ってくるまでそのまま額こすり付けて土下座してた*とか*。]
― 前日/診療所 ―
[外にいても聞こえるような大声に、行き交う人は目を瞬かせる。
言を発した当人の姿は既になく、助手が彼女を押えていた。
周囲には、外の世界の文字で綴られたカルテが散らばっている。
日常用いることはないが、個人の機密を保持するためであるという。
薬は診察場所からは離れた位置に置かれているため被害はなかった。
それは、さておき。
人の噂も75日とは言うが、
ミルドレッドの過剰反応は余計に長引かせそうだった。
ただし、あまりの反応ぷりを見れば公にはならず、
密やかに、そして、誇大されて伝わるのだろうが]
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