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―工房『Horai』―
ご苦労様。
[再び会ったミハエルは如何な顔をしたか。
こちらから先の出来事に触れるつもりはなく、いつもの微笑みを返す。
ゼルギウスの眼差しを受けて、イレーネの傍についた]
お構いなく。
[客室に通された後、台所に向かうイレーネに一応そんな言葉を掛ける。
手伝いには向かわなかったが、台所からの音に気を配りながら、椅子に*腰掛けていた*]
[幼馴染の姿が墓地へと消えた後、娘はもう一度辺りを見回す。手向けられたあの馨しい花の香りは未だ残っているのだろうか。後を引かれるような想いを抱きながら、娘はとぼとぼと帰路につく。途中、修道院を通りかかり治療をとも考えたが、今は人と会う気分では無く唯通り過ぎるのみ。]
…寄り道して戻ろう
― →湖畔 ―
[傷口を洗うために湖の畔へと歩を進め、蒼く透き通る水面を前にしゃがみ込み娘は映り込む自身の情けない姿と対面をすることとなる。]
天気が変わる前だから、もうこの辺りには誰も居ないのかしら
[地面が濡れている所に眼を写すと、少なからず水浴びした者はいたらしい。何時もと違い周りには誰の姿も見えず湖は向こう岸の山々を鏡のように映していて。]
…ちょっとだけ
[靴を脱ぐと娘はつま先を水面に滑らせ水の感触を肌で味わう。しろい足首についた紅い痕を癒すように時折足首を沈めては冷たさに口許を綻ばせた。]
[傷口を洗うだけでは済まず涼を求める身体は膝辺りまで脚を進水させる。エプロンスカートの裾を摘まみあげ太腿の所で寄せ、少しはしたなく有るが沈んだ気持ちを癒すには丁度良くて。対岸には別荘風の家が映り、良家が住んでいると聞き及んでは居るが面識は無く、娘はまるで別世界を見ている気がしていた。]
ああいう所に住むって、どんな気持ちなのかしら…
[娘は猫のように眼を細め。腿まで浸かった脚は水を大いに愉しむと冷え過ぎぬ前に陸へと上がる。靴を濡らしたくは無くて裸足のまま家である雑貨屋へふらりと歩み出した。]
―雑貨屋―
ああ、他のもゲルダちゃんと交渉した方がいいのか。
もう完全に店を任されてるんだね。
[多分という答えに、荷物から離れて店内を眺め始めた]
─ →宿屋─
[足早に道を進み、宿の近くまで戻ってきたなら、目に入るのは、旅装を調えた伯父の姿]
あれ、伯父貴。
……ん、そっか、荒れる前に。
ああ、大丈夫、伯父貴が戻るまではちゃんといるから。
……って、はい?
あー、ないからないから、そーゆー事は。
いらん心配しなさんな、って。
[大丈夫だな、と妙に念を押されてきょとり、とするものの。
何となく思い至ったその意に、苦笑しながら頷いて、旅立つ背を見送った]
― 雑貨屋 ―
ただいま、おばあちゃん
少し遅くなっちゃったね
[店を出てから時間も其れなりに経っていたためか先程の客はもういない。ほんの少しさみしさを感じながら場を設けてあるカルメンの人形欄に視線をやれば既にいくつかの人形は売れているようだった。]
やっぱり人気なんだ…ねえ、今度はもっと高く買い取っても好いんじゃないかな…
[と言いかけた所で奥まったカウンターの前、ユリアンの姿を見止め。誰も居ないものだと気が緩んでいたためか手にしていた靴をぽとりと落としてしまう。]
わ、あや、あああわあ… ええと、ユリアン …?
[娘は吃驚した様子で、ぽかんと口許を開けて眼の前の青年を見詰め。]
驚いた…雅かもう店に来てるとは思わなかったよ
ン―――…お久しぶりだね、お父さんは別のところにいるのかい?
─工房『Horai』前─
[ゼルギウス達を待つ間、風が何度か身を掠めて行く。
その度に金の髪はさらりと揺れ、翡翠は風を厭うように細められた]
ああ、来たな。
[やや離れた場所からかけられる声。
翡翠を向けると二種の銀と亜麻色が並んでいる。
亜麻色に軽く眉根を寄せたが、彼らが近付いて来る頃には表情を戻して]
いや、然程待ったわけでもない。
気にするな。
[謝罪するゼルギウスにはゆるりと首を横に振り。
イレーネとカルメンへの挨拶は頷くような仕草で返した]
邪魔をするぞ。
[そう言葉を紡ぎ、工房の中、客間へと通された]
―宿屋―
ふわぁーー…。
[父親を見送ってすぐ、誰もいない宿屋の中、暇をもてあましながら大あくびをひとつ]
アーベル、帰り遅いな……
[ぐてーっとフロントに突っ伏していた]
……ま、その辺りは特定誰かに限らんけど、な。
[小さな呟きは風に紛れ、届くとしたら共にある蒼鷹のみ。
僅かに首を傾いでこちらを見つめる眼にふ、と笑んで]
なーんでもねーぇよ。
さて、中入るか。
……大人しくしてろよ?
[そんな念押しをしながらドアを開け。
強くなる風から逃れるように、宿の中へと入って行く]
─宿屋─
[中に入ると、まず見えたのはフロントに突っ伏す姿]
…………。
[ちょっと沈黙して]
お前なー。
んなだらけてて、客が来たらどーするつもりだ、おい。
[とりあえず、突っ込んだ]
12人目、小説家 ブリジット がやってきました。
小説家 ブリジットは、おまかせ を希望しました(他の人には見えません)。
─村入り口・吊り橋─
[村へと至る吊り橋の前。
旅行鞄を地面に置くと、んーとひとつ伸び。]
おー、久しぶりの我が村だぜ。
さて……愛しの友人諸君は元気かねぇ?
[銜え煙草を燻らせ呵々と笑うと、鞄を持ち村へ徒歩を進める。]
―雑貨屋―
おかえりなさい。
[ただいまの声に振り返るけれど、彼女の視線は人形に奪われてるようで。声をかけるのと靴が落ちたのはほぼ同時だったかも]
はい、今年もお久しぶりなユリアンですよ。
そんなに驚かれるとは思わなかったな。
俺はゲルダちゃんに逢いたくて待ってたのに。
[笑いながら近寄ると落ちた靴を拾い上げようと屈んで]
いや親父は今回は来てないんだ。
怪我を……足、どうしたの。傷付いてるじゃないか。
ちゃんと手当てしないとダメだよ。
[説明は後回し。赤い筋に手を伸ばす]
─工房『Horai』・客室─
[茶を用意するためにイレーネが台所へと向かい。
ゼルギウスが客室に残ったなら視線を向けて口を開く]
それで、依頼についてなのだが。
前回よりも数を多めに頼みたいのだが、良いだろうか。
ゼルギウスの作る物はとても評判が良くてな。
[頼みたい細工と報酬額が書かれたメモをゼルギウスへと見せた。
数は多めだが、報酬も相応の額が書かれている]
それともう一つ。
イレーネの作った物もいくつか譲って欲しい。
宝石細工でも銀細工でも、どちらでも構わない。
身重の身故、今から作れとは言わない。
現在手元にある物で良い。
[どうだろうか、と。
翡翠がゼルギウスをじっと見詰めた]
/*
わぁぁい!ブリジットいらっしゃいませー!!
何か強そうなお姐さんだなw
これで守護回ってくる可能性が高くなったかな。
できればあともう一人。うん、贅沢だけど…!
(守護より聖痕を先に増やしたくなった兎猫です)
―宿屋―
誰かさんの帰りが遅いからだ。
[突っ伏したまま手をふりふり、顔を上げてから]
むおっ!どうしたんだ、それ?
[カウンターから身を乗り出すようにして、つれてきた鷹を指差しながら]
ここで飼うのか?
─宿屋─
なんで、そこで俺のせいにするか。
[そこはさっくり突っ込むものの。
蒼鷹を指差しながらの問いにきょと、として]
ん? あー、そうか。
お前らには見せないで、山に放したんだっけ。
[なるべく人に接しない方がいいだろう、と思い、来てすぐに山へと放した事を思い出す]
街の方で人から譲り受けたんだが、あっちじゃ飼えなくてな。
前に戻ってきた時に、山に放してったんだよ。
旧交温めたところで山に戻そうと思ったんだけど、きかなかったから連れてきただけだ。
別に、ここで飼う訳じゃねぇよ。
―修道院前―
[大事な本は置いてきた。
荷も腰にぶらさげた布袋とその中身のみ。
修道院の門を出た所で青年は空を仰いだ。
暗い雲が強い風に流され村に迫ってきていた]
――…降る前に帰れっかな。
[目を眇め小さく呟く]
─村・役場─
[村の役場にて、身上書の更新を行なう。]
さらさらー、とな。
ほい、これでいいな? んじゃ、俺はもう行くぜ?
夏の間はこっちにいんだろーから、何かあったら来てくれよ。
[そう言ってピッと用紙を放り投げると、役所をあとにした。]
ン―――…ただいま、と君に云うのは違和感が有るね
[少し恥ずかしそうに笑み、落とした靴を拾うため屈もうとした矢先、ユリアンの手の方が先に伸びたのに気が付き、
娘は手を空に彷徨わせた。]
あン、靴は拾わなくても好いのだよ
此方からすれば君は仕入れ先のお得意様なのに
[驚いた理由については裸足のままなのを見られた為もあり、其処は適当に誤魔化してしまうとして。]
ふふ、相変わらず口が上手いのだね
矢張り商売柄と云うのかな…余り高い物は買わないよ?
[淡く笑みそう返す。ユリアンの父親の話になれば眼を瞬かせ、]
…そうなのかい、元気にしているのなら好いのだけど
って、ひゃあ
[しろい足首の紅い筋は先ほどよりは薄く有るがそれでも肌の白さからかとても目立つ様子で、娘は触れられそうになれば頬に紅を刷くだろう。]
―宿屋―
愛情表現みたいなもんだ。
[アーベルの突込みにはそう笑って返しながら、
鷹についての説明を聞けば]
そっか、懐かれてるのはいいことじゃないか?
暴れないんだったら、しばらくうちに置いてもかまわないぞ。
天気も崩れるみたいだしな、そいつも雨宿りできたのかもな。
[鷹のほうに近寄り、遠慮がちに手を伸ばしながら]
名前はつけてあるのか?
─宿屋─
どんな愛情だよ。
[さらっと突っ込み一つ付け足し]
ちゃんと野生に戻って欲しい、って部分もあるんで複雑なんだが……。
ん、まあ、暴れるのはないだろ。なるべく、俺の目に届くとこに置くつもりだし。
天気が落ち着いたら、棲み処に戻るだろうしな。
[言いながら、蒼鷹を見る。
当の鷹は、伸ばされる手をじいい、と探るように見つめて]
名前は、一応ある。キーファーだ。
/*
約二時間、355pt……。
ぺ、ペース落とせば、何とかなる?
というか、この独り言落とすまでptが555だった。
[そうして、放り投げた身上書。そこには自身のことについて綴られている。]
■名前:ブリジット=ラヴクラフト
■年齢:20代前半
■職業:小説家
■経歴:それなりに名の売れている伝奇小説家。
夏以外の時には麓の村にて執筆活動を行ない、夏に村へと帰って来るという生活を送っている。
なお、生まれも育ちもこの村であるため、知り合いもそれなりに多い。
■希望縁故:同年代で結んでいただけたら嬉しいかな。
あと、家は売り払っているので、宿屋に世話になっているかと。
中
ブリジットきたー。
20代前半。
ど、どっちだ…!
(現在村の人間は、25歳前後組みと、20歳前後組みに分かれているようです。)
─工房『Horai』─
[湯を沸かす間に一度工房へと入り、一度手袋を嵌めてから、
作業台の端の方に溜まってあった銀分を、
他の塵が混ざらないよう注意し、丁寧に小さな皮の袋に入れた。
それから余っていたラピスラズリの小さな欠片も別の袋に入れ口を縛る。
然程の量は無いが、人形に使う分には足りるだろう。
二つの袋は一度ポケットに入れて、手袋はまた脱いでから台所へと戻ると、
丁度竈にかけた鍋の中の湯は、小さな泡を立てていた。
カップとポットを一度湯で温めてから湯を入れ、茶葉が十分に開ききってからカップに注ぐ。丁寧に手順を辿ってから、鮮やかな深緋色をした紅茶を4人分、トレーに乗せて客間へと戻ってくると、丁度ミハエルがゼルギウスに話し終えた頃合で。
どこか嬉しそうな夫の顔を見れば、何かいいお話でもあったのかしらと当人らを微笑んで見てから、用意したカップをテーブルに並べていった。]
ああ、カルメンさん。
銀粉と、それからラピズラズリの欠片も少し、入れておきました。
折角だからこちらも持って行って下さいな。
[そう言って、カルメンの前にカップを置く際に、
ポケットから取り出した小さな袋を二つ、脇に置いた。]
―宿屋―
アーベルおにいちゃんは、あまっあまのとろける愛情表現がいいのぉー?
[突込みにはいつもより声色を乙女チックにそう言ってから、
すぐにいつもの調子で]
キーファーっていうのか、よろしくな。
[そっと指先で頭の辺りをこしょこしょっと撫でながら]
余り長居するなら宿代もらうからな。
[そうキーファーに笑いかけた]
―雑貨屋―
ここはゲルダちゃんのお店だからねえ。
俺にとってもお得意様だから気にしない気にしない。
[驚いた理由が他にもあるとは知らずに誤魔化され。
音に従って視線を動かしただけなのだけど]
これも商売道具のうちですからと。
あれ、絹のスカーフは売れ残り決定か。
[笑っていたのも赤い筋に気がつくまで。
足の怪我は旅の空では影響が大きいから気にするところで。
何より白い肌についてると色浅くても痛々しい]
ああ、ごめん。草か何かで切れたかな。
洗ってあるみたいだから薬塗っておけばすぐ治るか。
[触れた手は小さな悲鳴にすぐに離して。
けど怪我の状態を見ているからその顔には気づけなかった]
―工房『Horai』/客室―
[台所の妻を、そわそわと気にする素振りを見せていた男は、しかし、商談の話になると流石にそちらに集中し真面目な顔を作る。]
そうかぁ。評判佳いのは嬉しいな。
うん……ちょっと数は多いけど、頑張る。
子どもも産まれるし、お父さんは頑張らないと、なんだよ。
[けれど、口調は眼の前の少年と年齢が入れ違ったかのよう。
真面目な顔は氷解して、ほわんとした笑みを湛え、渡されたメモを確かめ頷いた。]
あ、今年はイレーネのも注文してくれるんだね。
嬉しいな。彼女の銀細工はとても素敵だもの。
[そして次にかかった言葉に、室内故色眼鏡越しでない紅を、翡翠に合わせて細めた。]
─宿屋─
そこで、声色変えるのやめい。
[何となく、疲れたような声でぼそりと言った。
声色を使い分ける女の相手はよくするけれど、ここでやられるのは調子が狂った]
ま、ネズミ捕りぐらいはやってくれるだろ、多分。
それ、宿代代わりにしとけ。
[撫でられる蒼鷹を見ながら、さらりと言うものの。
やはりというか、人を警戒しない様子には、やや複雑な思いもある]
新しいのは、ギュン様に注文受けたのもあるから、夫としては無理させたくないけど。
手元にあるのなら……イレーネと直接交渉してもらえるかな?
作品に関しては、いくら夫婦だっていっても、各自の管轄下にあるべきだと思ってるから。
―――……でも、断りはしないと思うよ。
[視線交えたまま笑みを深めれば、丁度紅茶の佳い薫りがしてきた所であった。
その薫りに台所に眼をやり、同じく台所に気を配っていてくれたカルメンに、気を配ってくれてありがとう、と眼差しで告げたところでと妻の姿が見える。
彼女たちのやり取りを、にこにこと笑顔で見守ってから]
ミハエル君が、君に商談があるそうだよ?
[イレーネに吉報を告げた。]
─宿屋前─
[鞄を肩に背負い、宿屋の前へとやってくる。]
さぁて、おっちゃんは元気してるかな。あと、ベッティも。
[呵々と笑い、新しい煙草に火を着け銜えると、]
おいーす、こんちわー。また世話になるぜー、と。
[バーンと扉を開き、中へと入った。]
修道士が空見上げたよりも少し後。
暗い雲が村の上を覆い始めていた。
風も湿り気を帯び始めて。
雨の前兆。けれどそれ自体は自然現象にすぎない。
夏の通り雨だろうと思う者の方が多かったはずだ――。
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