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[ほんの僅かな間。
少女の思考は知らず、その場に居たとも知らず。
淡々と、声は紡がれる]
気にしていなかったらいいね。
もう居ないから、訊けないけれど。
変な感じだ。
さっき、クー達が弔いに行ったよ。
[ナサニエルの言葉に、静かに首を振る。]
……分からない。
気がついたら、身体が勝手に動いていた。
ただ……彼の側に、誰も居なくなるのは、良くないような気がしたんだ……
彼の遺体が隠されてしまうかもしれない。
そう、思ったんだろうか……
[右目の瞼が、ゆっくりと降りる。]
とにかく、終焉からの使者は、まだ生きている……。まだ生きて、俺達の中で……殺人者は、次の獲物を狙っているのかもしれない……
……どうした?
[唐突な動きを訝るよに、問う。
器が城に。
紅蛇の言葉は端的。
言われて初めて意識した。己が器が、泉の畔から消えている事を]
……わざわざ、引きずって行かんでも……。
[また、苦笑が浮かぶ。
己が器を見つけた踊り手。
最後に交わした言葉が、ふと、意識を掠める]
全てを受け容れて真実としてしまうのは、
愚かしい事かもしれないね。
でも、全てを掬い取ったのなら、
少しだけでも、その人にとって、
あたたかいものに慣れるのではと思うんだ。
他者の真意を悟れる程、僕は聡くないから。
[自嘲の聲を聴き、戯言だよ、と返して笑った]
そうね……え?
[言葉は自然と出た。尤も、疑問符は「訊けない」ことに対してではなく、「変な感じ」と言うことに対してだったのだが。ネリーの死を知るが故の疑問符だったかも知れない。しかしそれは別の意味にも取れるような物言いとなった。紅紫の両目がラッセルを見つめ瞬く]
……前向き、か。
[零れたのは、短い言葉]
こうなった以上、前向きも後ろ向きもないんだろうが……。
[ただ、虚しさに飲まれはすまい、と。
決意めいたものがふと、過ぎる]
護りの力、もう、どこにも届かんが……。
[言葉は、途切れ。
紅蛇の闇色の眼が、城の方へと向く蒼氷を見つめる。
物言いたげなそれに何一つ言う事無く、蒼氷は再び、*緋へと落ちた*]
……知らなかった?
強い臭いがしていたから、
てっきり、シャロも知っているかと思った。
ああ、でも、誰かは分からなかったかな。
[疑問の向けられた箇所は悟れず。
此方を見る両の眼を見詰め返す。
色を映さない瞳では、喩え違っていたとて、
理解出来なかったろうけれど]
私たちは、ネリーの弔いを。
[静かな声で告げ、十字を切る]
ハーヴェイ殿も、そうしなければなのですね。
[チリン]
[もの悲しく、鈴の音が響く]
やれやれ。それにしても、敷地が広かったのが幸いです。
哀れな犠牲者を埋葬するには事欠かない。
[ふう、とため息をつきながら。]
仮に、外に出ることのできない閉鎖空間に閉じ込められたとして、
死体とともに生活を営まなくてはいけないことを想像すると。
腐っていく死体を見ながら、朝の食事なんて。
ネリー……?
ああ、あの、メイドさんか……。
彼女も、獣に?
まだまだ若かったというのに……。
[琥珀色の瞳を微かに曇らせた。]
え、ええ。
[咄嗟に、知らないことにして答える]
そう、だったのね…。
匂いは、昨日のイザベラの料理で鼻がやられてたのかも知れないわね。
ちょっと、気付かなかったわ。
[適当なことを言って誤魔化す。瞳を見つめ返されるとほんの少しだけ息を飲んだ。ラッセルが瞳に色を映さないのは知らず、僅かに緊張はすれど今は元の色であるために取り乱すことは無かった]
それで、クインジー達が弔いに行ってるのね。
…後で祈りだけでも捧げようかしら。
あの子には少し世話になったもの。
[ふ、と瞳を伏せ呟いた。それから小さな扉を閉め、廊下へと出ようとする]
私は行くけど、ラッセルは?
踊り子 キャロルは、教師 イザベラ を投票先に選びました。
死体を弔っていただけだ
ネリーが終焉の使者かと思ったから、殺した
[それだけだ、というように]
[男にはそれ以上の感慨などないようだ]
――まあ弔うか
いつまでもここにいるわけにもいかないだろう
マダム・イザベラ。
フリークスショウだけは、今は勘弁ですね。
殺されてしまった人々には申し訳ないけれど、我々は殺されたとは……。
……ベルって、料理できたの?
[心底驚いたというように、眼が見開かれた]
オレは、いいや。
きっと、虚しくなってしまうから。
[シャーロットが通り易いように身を引き、
ゆるゆると左右に首を振る]
[クインジーの言葉に右目を見開き、唇を開いた。]
ネリーが終焉の使者だと思ったから……殺した?
何故だ?
彼女に何か「手掛かり」があったのか?
終焉をもたらす者のニオイを、感じたのか……?
それでも、死者に触れた手で食事をするのは変わらないのではありませんこと?
早めに終わらせるに越した事は無いのでしょう。
[そうして、僅かだけ切った指先を見つめる]
[また薄くあかが滲んでいた]
ネリーは。獣ではなく、
[答えは当人の口から出たので告げる事なく]
彼岸と此岸を明確に分けるという意味で、
埋葬行為を行うという指摘ですね。
なるほど、大変高度なご指摘です。
[ギルバート本人にそのような意図があったかわからないが、
深読みをするようにほうほうと頷いている。]
その「齎す者」とやらが見つかるまでは、
連日の埋葬ですね…ひどい労力になりそうです。
[そう言いつつ、ネリーの亡骸の近くへ寄る。]
[とはいえ、流石に全てを落としきることはできません。
一番赤の広がった――恐らくは殺害現場なのでしょう、その場所だけは何とか薄くなったようです。
すっかり赤く染まった水が揺れています。]
……壊滅的だったわ。
[イザベラの料理の腕に関してはその一言に留めた]
そう…。
それじゃ、私は行くわね。
[無理に引っ張って行く理由も無いため、空けてくれた場所を通って出入口へと近付く。一度首を横に振るラッセルを見てから、廊下へと出て行った]
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