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[返された言葉に、軽く唇を噛む。
フラッシュバックする、昨夜の光景。
舞い散る桜花と、その下の──]
…………。
[それを振り払うよに軽く首を振り]
榛……一度、ここから離れよう。
みんなに報せないと……な?
[ぽふぽふ、と頭を撫でてやりつつ、諭すように告げる]
それにお前、そのままじゃ風邪ひいちまうし。
―雨が降り出す少し前―
今は余所から来た人間は…辛いでしょうね。
利吉さんは朝旅籠におりましたよ
[琉璃の意見に同意を示しながら、利吉についてはそう告げて]
そうですね。一雨来そうですし…私は旅籠にでも行きますか。
少し考えたいこともありますし
[言って、琉璃も旅籠にいくならばともにいき。
数名は桜を見にいったことを主人に聞けば、孝博が帰ってきたら呼んでくださいと告げて、一旦部屋へと引っ込んでいった]
[ふ、と我に返る。]
・・・そ、だ。
電話。
[借りるな、とは言わなかった。
相手は既に事切れている。
黒電話のダイヤルを回し、受話器を耳に当てる。
無音。]
[離れようと言う言葉には震えながら小さく頷いて。立ち上がろうとして、足元に気付く]
あ…くつ…。
[飛び出してきたために靴を履いていなかった。流石に雨の中このまま歩くのは抵抗があり、靴を取りに行こうと玄関の扉を見るも、先程の光景が思い出されて開くまでは至らない。震えた手でドアノブに手をかける体勢のまま動けなかった]
―回想―
父さん。いえ、当代様。
[その呼び方で父はすぐに気付いたようだった]
「――櫻木に行ってくる」
はい、お願いします。
[そんな小さな会話を交わしてから暫くして。
兄が食事にやってきた]
父さん、櫻木に行ったわ。
私も行ってくるから。
[すると片付けは自分でやると言われて。
ぽふり、と昔のように撫でられた]
…うん、できるだけ気をつける。
[少しだけ泣きたい位嬉しかった。
だから、そうと答えた]
[ふらふらと表に出て来る。
中に駆け込む際に思わず放った傘を、雨に打たれながら拾い上げた。]
ダメだ。
電話線、切れてッし・・・オッサンも。
[子供を抱く聡に向かって、首を振った。]
[動けない榛名の様子に、軽く眉を寄せ、その手に自分の手を添えて離させる]
ちょっと、こっち持ってろ。俺が取ってくるから。
[やんわり言って、差し出すのは先に取り落とした傘]
[手を添えられたことで、ふ、と史人を見て]
…う、ん……ごめ…、あり、がと…。
[「おね、がい…」と言ってドアノブから離された手を胸元で握った。差し出された傘を受け取り、じっと史人の動向を見つめた]
[無言で頷く。
相変わらず濡れ続けている聡の傍に寄り、傘を差し掛け、]
とにかくダレか、・・・ヤ、着替えが先か?
その子は・・・取り敢えず中に。
[先程出て来た店を示す。]
−少し前、桜の丘にて−
ほんと。気味が悪いくらいにね。
[黙祷を捧げ、見上げる。
見事に花開いた桜。枝振りから予想できたようにそれは、見事な。
軽く微笑みながら、内心では冷たいものを感じていた。
裕樹に促され、旅籠へと戻る途中で足を止めた。ぱたぱたとポケットを叩く。]
あ…っ、何か軽いと思ったら。
ごめんちょっと戻るわ。煙草落とした!
濡れる前に拾ってくるー。先に行ってて。
[ひょっとしたら一服するかもしれないしーと二人に言い残し、半分くらい降りた丘を再び*登りはじめた。*]
―回想―
[史人を残し、今にも降り出しそうな雨雲が覆う中、櫻木の家へと。伯父はどこかやつれた様子で、だが頷いて奥へと入れてくれた]
[準備が整うまで、と一室へ通される。
そこで綾野の宮司姿を見たのは、まだ数日前のことで]
――ッ。
[目元を乱暴に拭った。今は泣くわけにはいかなかった。
呼吸を整えてもう一つの準備を。やらずにすめばと思いながら]
まぁた、そうやって謝る。
[口調だけは冗談めかした物言いをして。
ドアを開け、玄関の中へ。
一見すると、変化らしきものはない──が、微かに感じる臭いが、大きすぎる変化を物語っていた。
再度のフラッシュバック。それを振り払うかのように、靴を拾って、外に出る]
……これで、間違いない、よな?
ところでお前、歩けるか?
[持ってきた靴を見せつつ、抱える懸念を投げかける]
…もう、癖、だよ…。
[相手の口調につられるかのように言葉を発し、少しだけ緊張が和らぐだろうか。持ってきてもらった靴を見て肯定の頷きを返し]
うん、これ…。
…多分、大丈、夫。
[靴を受け取りその場で履いて。歩けるかと聞かれると曖昧に返す。これ以上心配をかけたくないが、本当に歩けるかの保証は無かったために。身体は、相変わらず震えている]
[孝弘から傘を受け取ると、それを肩にかけて、しゃがみ込む。]
っふーーーー…。[大きく、ため息。]
[ふと、気づいたように]
…あ、おい、この村に警察はいるのか?
この村に通じる道が土砂崩れを起こして塞がってるんだ。
俺はその事を西行院、ってのに知らせに行くところだったんだが。
研究生 孝博は、探偵 利吉 を投票先に選びました。
研究生 孝博は、青年 聡 を能力(襲う)の対象に選びました。
―旅籠の一室―
[考えることはいくつかある。事件のこと。今後のこと。
だがそれよりも、きっかけが気になって]
警察を…と言いましたが、今回の事件は単純なものなのでしょうかね
[率直に言えば伝説などない。といいたいが、感覚がそれを否定する。それはなんとも皮肉な理由。自分は両親とは違っていて]
本当上手いこといかないものですねぇ…ですが最初から踏み違えていても、踏みとどまれなかったのは自分ですし…
[だが今はそれはいい。それよりも、もし、伝承通りだとするならば、己にも何か―]
宿命…ですかね
[頭を振る。らしくないと。だが]
[晴美の反対にも関わらず、古老どもの結論は警察には報告しないというもの。
それはつまり隠匿を村の意志とするということ。
もちろん、それを良しとする晴美ではなかったが、]
……ちっ。糞虫どもがこんな時に限って要らぬ知恵を回しおる。
[西行院の安全のためと言う名目で屋敷内を闊歩するのは、古老子飼いの用心棒。
その真意は恐らく、晴美が独断で警察へ通報することを監視するためだろう。
至極不機嫌に、爪を噛む。]
[癖、という返事にそういう問題か、と返しつつ、靴を履く様子を見守り。
曖昧な答えに、はあ、とため息一つ]
……多分、ってなんだ、多分、って。
んじゃ、この方が早いか?
[あっけらかん、と言いつつ。
抱え上げようと、手を伸ばして]
あァ、どっか、電話繋がるトコありゃイイケドな。
どっちにせよこの雨じゃ、何時になッか。
[もう一つ、転がっていた傘を拾い。]
イヤ、警察は・・・
・・・・へ?
ちょッ、嘘だろ?
[問いへの応答は、思いも寄らない情報によって途切れる。]
[やがて届いたのは呼び声ではなく]
[怒声]
「道が塞がれた」
「見つけなければ」 「皆死ぬ」
「西行院に」 「もう動いて」 「村でも既に」
[立ち上がり玄関へと。数人の声]
「…遅かったようだ」
[伯父の声。奥歯を噛み締めて一つ頷く]
わかりました。ならば私も…村を見てきます。
[静止されかけた手が止まる]
「…必要なら、いってきなさい」
さっき、何度も、走った、から…。
発作、起きなかった、のが、不思議、な、くらい。
[泣き止みはしたが、呼吸はまだ整ってなくて。未だ肩で息をしている]
……え?
[この方が、と言われ視線を向けると同時に身体は宙に浮いていただろうか]
わっ…!
お、重い、から、良い、よ…!
[その体勢の恥ずかしさから頬を朱に染め、体重を理由に下ろしてもらおうと。じたばたするほどの体力は無いようだ]
[とは言え、それしきで黙っている晴美ではなく。
監視の目を盗んで、電話をかけることに成功する。
足下に数人の気絶したチンピラが折り重なっているのは気にしてはいけない。
だが、思ったより梃子擦ったため、その時点で既に日が昇って(天気は雨だが)幾許か過ぎてしまっていた。]
とりあえずは、一段落か。
[ひとまず安堵する晴美だが、まさか崖崩れで警察が足止めされることになるとはこの時は微塵も思っていなかった。]
えへー。うれしいなー
[優しいってさ!ゆきおねーさんだいすき。
でもガキとかさっちゃんに言われたけど!むっかー]
え?
どしゃくずれ?
見たこと無いけど……道とか、やばくない?
[そうこうしてたら、ゆきおねーさんが電話つかえないっていってる。
うーん、]
電波も入んないのにだめだなぁ
[言っちゃった。つい。]
あ、いってらっしゃいさっちゃん
[そうして見送って、お茶を飲む。うーん、おいしー]
……この雨の中で発作とか、勘弁してくれな?
[今更ながら、こちらに来ようと決めたのは正解だったと思いつつ]
って、何言ってんだ、軽すぎるくらいだぜ?
あ、傘の支え、頼む。落としゃしないから、安心しろ。
[重い、という主張はさらりと受け流した。
同時に、腕にかかる重みと、雨と外気で冷えてはいるが、それでもはっきりと感じる──生きたのもの感触に、安堵のようなものを感じていた]
[浅い眠りを軽く取り、雨の音を聞きながら部屋を出て階下へといき]
おや、裕樹と涼さん。帰ってきていましたか。
榛名さんは送り届けていましたよ
・・・マジかよ。
[語る様子は嘘とは思えず。
眉間に指を当て、深々と溜息を吐く。
暫く沈黙が降りた。]
・・・・・
とにかく、此処にいたッて仕方ねェな。
西行院サントコ行くか?
…起きないことを、祈るよ。
[実際自分では発作はどうにも出来ず。安静にしているしか方法は無い。こちらの主張は軽く受け流され。結局そのまま運ばれることになる]
う、ん…分かっ、た…。
[歩いている途中に倒れるよりは良いのかも、などと考え直し。雨に濡れぬよう傘を支える。体勢上、史人によりかかる形となり。伝わる温もりは徐々に呼吸をも落ち着けていった]
……み、んな、大丈夫、かな……。
[自分の周りで起きた惨状を思い出し、運ばれながら、ぽつりと漏らした]
[そして現在。
まあ、少なからずチンピラを熨したため、父親の命で奥座敷に謹慎される。
ご丁寧に窓には鉄格子、扉も重い鉄の扉。
壁に腰掛け、僅かに聞こえる雨音に合わせるかのように、カチンカチンと懐中時計の蓋を開閉させていたが]
……おかしい。
電話してからもう4時間は経つ。
それなのにサイレンのひとつも聞こえないとは。
……出るか。
[ポツリと呟くと腰を上げ、コッコッと壁を叩いて]
おらぁっ!!
[どぐぉっとヤクザ蹴り。ぽっかりと穴が空く。]
あ、はっちゃん!
うん、ちゃんと桜みてきたのー
本当に咲いてたよ。
びっくりしちゃった
[お茶もう一つ、はっちゃんにあげよう!]
はるなちゃん、だいじょうぶそう?
兄さんですらあんなに遠かった。
なら探す時には。
[使わないと駄目かな、と独り言を口にしながら道を下る。
僅かに左足を引きずりながら、それでも早足で]
どうして咲いてしまったの。
咲いたら、散らなくちゃいけないんだよ。
[途中足を止めて、浮かび上がる薄紅を振り仰ぎ呟いた]
……どうして呼んでしまったの。
同じことが繰り返されてしまうのに。
[今更とは分かっていても呟かずにはいられない。
そうか、あれがそうだったのか、と思うものがあるから]
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