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…、…ふ
[紳士を装った口振りに、不意をつかれたように笑みが零れた。
細い指を口元に当てて、瞳を細めた。黒髪がさらりと揺れた。]
…そぅ。
私も行っていいかしら?
[老人がまだ会話ができるか解らないけれど、と思いながら。
エーリッヒに自分が得た情報と、ベアとリーチェ達が話していた事を伝えただろう。]
服は…、その後ね。
―― 回想・冷凍睡眠施設 ――
[食事の誘いに、帰ってきたのは曖昧な反応だけ]
ほんのすこいでも、何かお腹に入れたがいいですよ。
とりあえず、これだけ置いてきて、しまいます
[鞄を掲げて、見せた。
カプセルに戻ろうとしたときに、ダーヴィッドから声をかけられて]
あ、はい。らいじょうぶです。
お気遣い、ありがとうございます。
[そうして、彼らが連れ立って医務室に向かうのを、見た。
手伝おうかと思ったけれど、くらりと幽かに眩暈がして。
気がつかれないよう、そっと踵をかえした]
[ヘルムートには、会釈をするだけの余裕しかなかった。
自分のカプセルに座り込むと、小さく深呼吸をする。
頭痛が引くのを待って、抱えていた鞄を開けることにした]
…………。
[外見は無事だったけれど、中身はかなり荒らされていた。
しょうがないとは思いながら、小さくため息をつく。
残っていたのは、紐でくくられた2冊の小さな本]
[1冊目は、リルケの詩集。
表題の文字をそっと手でなぞって、目を細めた]
良かった。でも、私、2冊も入れましたっけ……?
[もう1冊を確認するために、それをひっくり返す。
目に入る、その題字は]
………コルチャック先生の、伝記………
[声がかすれる。ひどい吐き気がこみ上げてきた。
本を投げ出すと、口元を軽く抑えて洗面所に向かう。
冷凍睡眠装置に入る前、絶食措置が取られていたからきっと何ももどすものはないけれど**]
毛布かなんか持ってきたほうがいいかなぁ?
[幼子の背中を撫でながら、
入ってきたエーリィには人差し指を口の前にたてて、静かにするようにとの仕草。]
[星詠の女性を笑わすことができた青年は、
涼しい顔でしたり顔。]
ええ、それは構いませんよ。
情報提供、ありがとうございます。
[申し出に頷き、厨房へと。]
― 厨房 ―
おや、ベアトリーチェさんはお休みですか。
[辿り着いた場所で、ゲルダにジェスチャーで静かに、
と云われれば声を潜め、これを返しにきたのだと、
おたまを持ち上げた。]
あれだったら、僕が医務室まで運びましょうかね。
あ、ベアトリーチェさん抱えると、
ノーラさんの食事を運べないなぁ……。
[どうしようか、と少しの困り顔を見せた。]
―大広間→厨房前―
…。
[足が石のように重いのは治りそうになかった。やや諦めたように溜め息を吐いて、右足を僅かに引きずりながら厨房へ向かう。]
…。
[眠っている少女を見ると、静かな室内の理由を悟る。
エーリッヒが困っているのなら]
彼女を…先に。
どうしよっか?
…動かしたら、起こしちゃうかな?
[眠る少女のやわらかほっぺをふにっとしながら、
礼を言われるとはにかんだ笑みを見せて。]
美味しいって言われると、つくりがいあるよ。
またなんか作るね。
ノーラさん、待って居られたら良かったのに。
[ゲルダの傍によると、後ろから掛かる声に、
一度そちらを向いて、困った風な表情を作る。
ちらり――刹那、彼女の足に視線を向け]
起こさないように、運びますよ。
美味しい料理を作ってくださるのは嬉しいです。
でも、ゲルダさんも無理しないように、ね。
[ゲルダの声に、違和感を感じて、
視線を彼女に移すと、はにかんだ笑みに重ねるよう
微笑を作った。]
[皆が口にし、美味しいと言っているシチューに軽く火を入れてからお玉を使って小さな皿によそう。]
…いい匂いね。
[冷凍されていたものも量には限りがあるのだから、そう長くは持たないのではないかと思う。長期間、ここに留まるのは病にも良くないと感じていた。
]
お嬢様にはなれそうになくて…
[待っていれば、と言うエーリッヒには冗談混じりな言葉を返し
ベアトリーチェを運ぶ姿を見送ってから食事を始めた。]
…柔らかい味ね。
[細い瞳をゲルダに向けて礼を告げる。
食事が終われば片付けて医務室へ向かうだろう。**]
では、今度は是非お嬢様になってみてください。
[ノーラの冗談混じりな言葉に、
こちらも冗談混じりに、けれど願いを込めて。
云いながら、自分が使った器は片すと、
ベアトリーチェを横抱きに抱え上げた。
少し背中が軋む音――そ知らぬふりを。]
僕は、先に医務室に向かいますね。
[抱え上げたとき、少女が起きて否と示さなければ、
ベアトリーチェを抱えて医務室の方へ。
否と示されたなら、少女の髪をなで、
「今度から寝るときは医務室のベッドでね?」
と告げて、どちらにしても
ゲルダにも声を掛けてから厨房を出る。]
…うん、判ってる。
[無理するなとの言葉にこくりと頷く。]
みんな、病人さんなんだもん。
みんなで無理しないようにしなくちゃ。
だから、無理せず出来る事は出来るだけやった方がいいと思うの。
[ノーラが食事を取るのを見ると、嬉しそうに目を細めて。]
…うん。
こういうときだから、ちゃんと食べた方がいいんだよ。
食べないと…余計に弱っちゃうとおもうんだ。
食器おいといてね、洗っとくー。
[他のお皿とかも片付け始めた。]
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